電気料金の高騰や再生可能エネルギーへのシフトから、太陽光発電と蓄電池をセットで導入するケースも増えています。興味を持っているのであれば、具体的な仕組みについて知っておきたいところです。そこでこちらの記事では、蓄電池についての基本的な知識から太陽光発電と蓄電池を併用した際の電気の流れ、蓄電池を導入することのメリット・デメリット、支給が期待できる補助金などについて詳しくご紹介します。
蓄電池とは?

太陽光発電システムとの組み合わせで導入されるケースが増えている蓄電池ですが、具体的にはどのような装置なのでしょうか。まずは、蓄電池の基本的な構造や仕組みなどについて解説します。
化学反応で放電・蓄電する
蓄電池とは、内部にある正極(プラス極)と負極(マイナス極)の金属と電解液が化学反応し、放電や蓄電が可能になる電池のことです。正極には電解質に溶けにくい金属、負極には電解液に溶けやすい金属が使用されており、マイナス極の金属が電解液に溶けて発生した電子がプラス極に流れ込むことを放電と呼びます。一方、充電は放電とは逆で、正極の金属が電解液に溶け出して電子が負極に移る現象です。放電しても充電で元の状態に戻せるので、蓄電池は充電と放電を繰り返すことができます。
放電する仕組みは充電池も乾電池も同じですが、乾電池は内部の化学反応が終わると放電ができなくなります。この点が蓄電池との違いです。
蓄電池の種類
蓄電池は、基本的な構造はいずれも同じですが、内部の電極の素材によって特徴や用途は変わります。リチウムイオン電池、ニッケル電池、鉛蓄電池、NAS電池の4つの種類があり、スマートフォンやパソコンのバッテリーとしてリチウムイオンが使われていることが良く知られています。このリチウムイオン電池は小型で大容量という特徴があるので、家庭用蓄電池の素材としても使われています。
太陽光発電システムと蓄電池の関係
太陽光パネルで発電されるのは直流の電気ですが、家庭用電力は交流です。そのため、パワーコンディショナーという装置で直流から交流の電気に変換する必要があります。一方で蓄電池には直流の電気のみ貯めることができるため、太陽光発電システムのパワーコンディショナーで交流に変換された電気を、蓄電池のパワーコンディショナーを使ってまた直流に変換して蓄えます。
太陽光発電と蓄電池を併用した場合の電気の流れ

住宅用太陽光発電システムで発電した電気は、家庭用蓄電池に充電することが可能です。このように太陽光発電と蓄電池を併用した場合、どのような電気の流れが生じるのでしょうか。一連の流れを見ていきましょう。
発電する
太陽から降り注ぐ光を、エネルギーに変換します。屋根などに取り付けた太陽光パネルに太陽の光が当たると、パネル内の電子がエネルギーを放出して直流の電気が発生する仕組みです。
変換して振り分ける
太陽光パネルで発生した電気は直流のため、そのままでは家庭で使うことができません。そこで、太陽光発電システムの一部であるパワーコンディショナーによって、家庭で使える交流の電気に変換します。変換された交流の電気は、分電盤を通して自宅内に振り分けられます。
蓄電する
分電盤から蓄電池に電気を送ることで、電気が貯めることができます。ただし蓄電池に蓄えられる場合は、蓄電池用のパワーコンディショナーによって交流から直流に変換されます。
このように太陽光発電で蓄電を行うには基本的に2つのパワーコンディショナーが必要ですが、ハイブリッドパワーコンディショナーであれば1台で済みます。ハイブリッドパワーコンディショナーは電力を直流のまま蓄電池に貯めることが可能で、変換と発電のロスが少なく、省スペースにもなるのでとても効率的です。
電気を使う
蓄電池に貯めた電気は、蓄電量に応じて家庭内で自由に使用することができます。太陽光が出ている昼間に蓄電して夜間に使ったり、災害などが原因で停電になった際に活用したりと、様々な用途があります。
太陽光発電と蓄電池を併用するメリット

太陽光発電と蓄電池を併用することには、どのようなメリットがあるのでしょうか。いくつか具体例を挙げてみましたので、導入する際の参考にしてください。
電気代の節約につながる
太陽光発電で蓄電された電気を使えば、電力会社からの購入する電力量が減ります。その分、通常の電気料金を節約することができるようになります。特に、お昼から夕方にかけての時間帯は電力需要が多いので、太陽光発電システムと蓄電池を併用すれば電力会社から購入する電気量を抑制することができます。
それだけではなく、余剰電力は電力会社に売電することも可能です。蓄電池にある電気を電力会社に売電することで、収入が得られます。
発電した電気を蓄積できる
蓄電池があれば、自宅で好きな時に電気を使用することができます。また、地震や台風などの災害に見舞われて停電の状態になったときには、非常用電源としての役割も果たします。蓄積された電気が手元にあることで、安心した生活を送ることができるでしょう。
ピークシフトに貢献できる
電力会社は、社会の電力需要に合わせて発電所の発電量を調整しています。発電設備は運転・停止を頻繁に繰り返さない方が稼働効率は高いため、時間帯による電力使用量の差は少ないほうがいいとされています。
蓄電池があれば、充電しておいた電力を電力使用量が多い時間帯に使用することが可能です。電力会社が無駄なエネルギーを使うのを抑えることにつながります。こうしたピークシフトの取り組みを実施することで、社会への安定的な電力共有に貢献することができます。
蓄電池を併用するデメリット
メリットが多い太陽光発電と蓄電池の組み合わせですが、その一方でデメリットもあります。続いて、太陽光発電と蓄電池を併用することで考えられるデメリットについて確認していきましょう。
導入コストが高い
一般家庭で導入される住宅用の据え置き型蓄電池の場合、設置にかかる費用は本体+工事費込みで80万〜250万円程度が相場です。蓄電容量が多い製品、性能が高い製品ほど価格が高くなる傾向があるため、希望と予算のバランスが難しいところです。このように、導入に高いコストがかかることは、あらかじめ理解しておいたほうがいいでしょう。
設置場所にも注意が必要
家庭用蓄電池の標準的なサイズは、幅が約80cm、奥行が約40cm、高さが約100cmです。自宅の敷地内(屋内・屋外)に、このサイズの蓄電池を設置できる場所を確保しなければなりません。また、蓄電池は機械なので、設置された場所によっては劣化の進みが速くなってしまいます。高温・低温の場所、風通しが悪く湿気が多い場所などは避けて設置することが大切です。
使える回数に限界がある
蓄電池は使うほど劣化し、充電・放電回数の寿命を超えると蓄電容量が徐々に減少していきます。製品のカタログに記載されているスペックはあくまで目安なので、使い方や環境次第で寿命が早まってしまう恐れがあります。
太陽光発電と蓄電池を導入する際の補助金

太陽光発電と蓄電池を導入するには、多額の費用が必要です。その際、大きな助けとなるのが国や自治体から支給される補助金の存在です。では、どのような補助金があるのでしょうか。
国や自治体から補助金が出る
日本では温室効果ガスの大幅削減、脱炭素社会の実現を国として目指しています。太陽光発電や蓄電池を導入する際の費用は高額ですので、より多くの家庭に普及させるために、国や自治体から補助金が支給されています。導入を検討している際には、ぜひとも利用したいところです。補助金によって支給条件が異なるので、条件をクリアできるものを探して申請してみましょう。
国の補助金
<こどもエコすまい支援事業>
国土交通省による補助金事業で、住宅の省エネ化の推進を目的に2023年度に開始されました。補助対象が、省エネ住宅の購入、断熱工事、蓄電池の設置などのリフォーム工事と幅広いのが特徴です。蓄電池を設置する場合には台数にかかわらず1戸あたり一律64,000円が補助金として支給されます。補助金を受けることができるのは、子育て世帯、夫婦のどちらかが39歳以下の若者夫婦世帯(2022年4月1日時点)です。
都道府県の補助金
<災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業(東京都)>
東京都による、太陽光発電や蓄電池を導入する際に支給される補助金です。蓄電池単体では、補助金額は「設置価格の4分の3」もしくは「蓄電容量1kWhあたり15万円」の低い方で、上限金額は120万円です。また、リフォームで太陽光発電システムを導入する場合、蓄電池とセットであれば最大で600万円が支給されます。
各自治体の補助金を紹介
各都道府県、および各市町村で実施している補助金制度を挙げてみました。お住まいの地域でも実施している可能性があるので、自治体のホームページなどで確認してみましょう。
・東京都「東京ゼロエミ住宅導入促進事業」
・埼玉県「住宅における省エネ・再エネ設備導入支援事業補助制度」
・神奈川県川崎市「スマートハウス補助金」
・静岡県静岡市「静岡市版ZEH建築等事業補助金」
※上記の補助金はいずれも2022年度のものです。
まとめ
太陽光発電と蓄電池を併用することは、電気代の削減や非常用電源としての活用など、様々なメリットをもたらしてくれます。蓄電池は設置費用が高額ですが、補助金を活用することで資金の負担を減らすことが可能です。徐々に手が届きやすくなっているという追い風が吹いています。自身のライフスタイルに合わせて蓄電池を選び、より快適な生活を送りましょう。
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