屋根のカバー工法(重ね葺き)は、既存の屋根の上から新しい屋根を設置するので、短期間で新しい屋根にリフォームできるのが特徴です。本記事では、屋根のカバー工法(重ね葺き)のメリットやデメリットをはじめ、費用相場や耐用年数などの特徴を解説します。
屋根のカバー工法(重ね葺き)とは

屋根の「重ね葺き」とは「カバー工法」とも呼ばれ、既存の屋根の上から新しい屋根を設置するリフォーム方法です。既存の屋根を一度剥がしてから新しい屋根を設置する「葺き替え」と比較して、屋根を剥がさずに新しい屋根にリフォームできます。とはいえ、カバー工法(重ね葺き)はどんな屋根でも施工できるとは限りません。既存の屋根の損傷がひどかったり、既存の屋根材や屋根の形が重ね葺きに該当していなかったりする場合、施工できないケースもあります。施工の可否は業者に相談すれば確認してもらえるので、信頼できる業者に相談してから重ね葺きを検討するのがおすすめです。
屋根のカバー工法(重ね葺き)のメリット

屋根のカバー工法(重ね葺き)は、葺き替えと比較するとコスト面や工事期間といった面でメリットがあるため、屋根のリフォームを検討したときにカバー工法(重ね葺き)を選ぶ人も増えています。では、具体的にカバー工法(重ね葺き)を選ぶメリットについて解説します。
工事費用が安い
屋根のカバー工法(重ね葺き)は、一般的な葺き替えと比較してコストが大幅に抑えられることがメリットです。というのも、葺き替えを行うときは既存の屋根を剥がして解体して処分しなければいけないため、廃棄処分費用がかかるほか、人件費が高くなってしまいます。しかし、屋根のカバー工法(重ね葺き)は解体が不要なため、コストを抑えて施工できます。
工事期間が短い
屋根のカバー工法(重ね葺き)は葺き替えよりも手間がかからないため、短い工事期間で実施できます。工事期間が長引くと、近隣にも配慮しなければならないため、生活面で気を使う場面が増えるでしょう。さらに、施工業者のスケジュールを確保する難易度も上がります。しかし、カバー工法(重ね葺き)の場合、一般的に5日程度で施工が完了するので、スケジュールが立てやすいことがメリットです。
断熱性や防音性がアップする
カバー工法(重ね葺き)は既存の屋根の上に新しい屋根を重ねるので、施工前よりも屋根の厚みが増し、断熱性や防音性が上がる可能性があります。外の気候や環境の影響を受けにくくなったことで、暮らしの質が上がる人もいるでしょう。ただし、屋根のカバー工法(重ね葺き)は、断熱や防音を目的とした工事ではないため、防音工事や断熱工事と比較すると大きな効果が期待できないかもしれません。
追加料金が発生しにくい
屋根の葺き替えを実施する場合、既存の古い屋根にアスベストが使用されていると、工事費用のほかに処理費用が上乗せされます。アスベストを含む屋根の解体や撤去にかかる処理費用は、20万〜50万円ほどが一般的です。アスベストの有無を認識しないまま、工事の開始後に既存の屋根にアスベストが含まれていることが判明した場合、追加料金が発生し予算をオーバーしてしまう可能性があります。その反面、カバー工法(重ね葺き)は、既存の屋根の解体や撤去を必要としないため、工事開始後に追加料金が発生することはほとんどありません。
屋根のカバー工法(重ね葺き)のデメリット
屋根のカバー工法(重ね葺き)はメリットが大きい反面、デメリットもあります。というのも、屋根のカバー工法(重ね葺き)は既存の屋根に新しい屋根を重ねているためです。屋根のカバー工法(重ね葺き)を検討している方は、次のデメリットも把握した上で工事を依頼するのがおすすめです。
屋根の下地補修ができない
屋根のカバー工法(重ね葺き)は、既存の屋根の上に新しい屋根を重ねて設置するため、下地となる既存の屋根に損傷が見つかっても補修できません。工事を実施するときは、施工業者が既存の屋根を確認した状態で工事の可否を判断しますが、屋根の内部に腐食や劣化などの損傷があっても見た目では判断できないケースもあります。施工後に屋根内部の損傷が表面化してくることもあるため、カバー工法(重ね葺き)を実施するときは既存の屋根の年数や、家の周囲の環境や気候など、さまざまな条件を加味した上で工事を検討するのがおすすめです。
再度屋根工事を行うときに費用が膨らむ
カバー工法(重ね葺き)で被せた屋根が耐用年数を迎えたり、劣化したりした場合、再度屋根のリフォームを行わなければいけません。一度カバー工法(重ね葺き)の施工を行った屋根を再度施工する場合は、葺き替えしか選択できません。カバー工法(重ね葺き)を行った屋根の葺き替えを実施するときは、2層の屋根を剥がして解体する必要があるので、その分、人件費が膨らんでしまいます。カバー工法(重ね葺き)を行うときは、目先のコストだけでなく、長期的にかかるコストを計算した上で検討しましょう。
耐震性に影響を与える可能性がある
家は総重量が重いほど、地震が起きたときに揺れやすくなるといわれています。カバー工法(重ね葺き)は、既存の状態の家に新しい屋根の重みが追加されるため、施工前より耐震性が下がるというデメリットがあります。カバー工法(重ね葺き)を行うときは、家の耐震対策を強化する必要があるでしょう。
火災保険が使えない
風災や雪災といった自然災害が原因で屋根が損傷した場合、火災保険が適用となるケースがあります。しかし、火災保険が適用となるのは「損傷した屋根をもとに戻す工事」のみです。既存の屋根に新しい屋根を設置するカバー工法(重ね葺き)は、該当しないという見解が一般的となっています。屋根の損傷に対して火災保険が適用となる場合、カバー工法(重ね葺き)を選ぶとかえってコストがかかる可能性があるので注意が必要です。
カバー工法(重ね葺き)に向いている屋根材
屋根の状態を確認してカバー工法(重ね葺き)ができると判断できたとしても、すべての屋根材が適用できるとは限りません。というのも、新しく設置する屋根材が重すぎる場合、家の耐震性が著しく低下する可能性があるからです。軽量でカバー工法(重ね葺き)に向いている屋根材は次のとおりです。
- スレート屋根
- 金属屋根(ガルバリウム屋根など)
- アスファルトシングル屋根
カバー工法(重ね葺き)の施工で一般的なのは、ガルバリウム鋼板という金属屋根です。ガルバリウム鋼板は軽量素材であるのはもちろん、耐熱性や耐久性に優れているという特徴があります。また、既存の屋根材が次の項目に当てはまる場合は、屋根の損傷がほとんどなくてもカバー工法(重ね葺き)ができないので、注意が必要です。
- 既存の屋根の重量が重い
- 屋根がでこぼこや波状になっている
- 日本瓦やセメント瓦の屋根
屋根のカバー工法(重ね葺き)の費用
カバー工法(重ね葺き)にかかる費用は、30坪の住宅の屋根を施工する場合、150万〜180万円ほどが相場です。カバー工法(重ね葺き)は屋根の形や大きさによって変動します。たとえば、総二階の家よりも、斜面が2面ある切妻屋根の方が工事費用がかさむ可能性があります。また、屋根の形が複雑になっていると足場を組む難易度が上がり、作業もしにくいので、工事費用が高くなるケースがあるため要注意です。
屋根のカバー工法(重ね葺き)の耐用年数
屋根のカバー工法(重ね葺き)の耐用年数は、およそ20〜30年ほどといわれています。というのも、カバー工法(重ね葺き)で使われることが多い金属屋根の耐用年数が、20〜30年ほどといわれているためです。しかし、耐用年数はあくまで目安です。サビやひび割れ、カビといった劣化のサインが見られるようになったら、劣化が進む前にリフォームを検討するのをおすすめします。
屋根のカバー工法(重ね葺き)を依頼する際の注意点

屋根のカバー工法(重ね葺き)は、葺き替えと比較するとコストが抑えられるとはいえ、決して安価ではありません。信頼できない業者に依頼すると、失敗したり損をしたりする可能性もゼロではないでしょう。屋根のカバー工法(重ね葺き)を依頼する場合は、次の2つの点に気をつけて慎重に検討してみてください。
信頼できる業者を選ぶ
屋根のカバー工法(重ね葺き)は再度工事を行う場合、多額のコストが発生します。また、実施したカバー工法(重ね葺き)に不備があった場合、耐用年数が短くなる可能性もあるため、たしかな施工業者を選ぶことが大切です。施工実績が豊富な業者や、知名度のある業者は口コミが確認できるため、口コミや施工事例などを参考に施工業者を選ぶのがおすすめです。
相見積もりで費用を比較する
屋根のカバー工法(重ね葺き)を実施している施工業者のなかには、相場よりも大幅に高い金額で工事を実施する悪徳業者も存在します。反対に工事費用が安すぎる施工業者は、正しい工事を行っていない可能性もあるので注意が必要です。工事の金額感を把握するためにも、複数の業者に見積もりを依頼し、相見積もりを行うのがおすすめです。各工程やパーツの金額を見比べて、信頼できる業者に依頼しましょう。
まとめ
屋根のカバー工法(重ね葺き)は、既存の屋根の種類や屋根の状態にもよりますが、適用できる場合は工期やコストを抑えられるというメリットがあります。しかし、再度屋根工事をする場合は、2枚分の屋根を撤去する必要があるため、長期的な視点で計画してから屋根のカバー工法(重ね葺き)を検討してみてください。
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