働き方改革の推進により、テレワークが常態化されつつあります。会社に出勤しない勤務形態の影響で、地方の古民家を購入しリフォームして移住する人も増加中です。古民家には、たくさんのメリットがあるため興味を抱いている人も多いのではないでしょうか。この記事では、古民家のリフォームの基礎や相場などを解説します。ぜひ参考にしてください。
リフォームの基本知識
古民家のリフォームを検討する前に、リフォームの基礎知識が必要です。スケルトンリフォームやリノベーションとの違いなどを解説します。
リフォームとは
リフォームとは、老朽化により損壊した建材や住宅設備の性能を取り戻すための工事です。建材や設備を取り替えたり、補修したりして、継続して使えるようにします。キッチンの取替えや外壁工事などがリフォームといわれる工事です。経年劣化した建物のスケルトンリフォームやリノベーションについては事項で解説します。
スケルトンリフォームとは

スケルトンリフォームとは、建物の骨組みだけを残して、全てを作り直す大掛かりなリフォームです。通常のリフォームであれば、和室を洋室へ変更したり、洋室を防音室へと改装したりすることはできても、基本的に間取りは変更できません。
しかし、スケルトンリフォームでは、躯体のみの状態となるため、通常では難しい、水回りの移動や間取りの変更も可能です。ただし、耐震性や耐久性に影響するような間取り変更は不可となります。スケルトンリフォームの中には、屋根や外壁さえも撤去して、新築のように仕上げるリフォームもあります。
リノベーションとの違い
近年、リノベーション工事が注目されています。リフォームとリノベーションの違いは、工事の規模や工事が完了したあとの住宅性能です。
リフォームは、使えなくなったものを使えるようにして、使い勝手も良くする工事です。リノベーションは、既存の住宅に新たな価値を付加する工事なので、使えるものでも取り壊したり破棄したりして、意匠を凝らした建物へと変貌させます。
古民家の改築は、必要なものだけをリフォームして、古民家の趣を残せばコストパフォーマンスも高くなります。
古民家の寿命
家の寿命は、耐用年数と勘違いされるケースが少なくありません。一般的に用いられる法定耐用年数は、減価償却の際に使われる法律上の数字であるため、家の寿命を表している数字ではありません。住宅構造別の法定耐用年数と寿命とされる年数は次のようになっています。
住宅構造 |
法定耐用年数 |
寿命とされる年数 |
木造住宅 |
20~22年 |
30~80年 |
鉄骨造 |
27~34年 |
30~60年 |
鉄筋鉄骨コンクリート |
47年 |
40年~90年 |
※法定耐用年数は、木造や鉄骨でも造りや肉厚が異なれば年数も異なります。
※参照:国税庁 耐用年数(建物/建物附属設備)
※参照:国土交通省「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」
建物の寿命は、使い方や立地条件、メンテナンスによって大きく異なります。木造住宅であれば、一般的に30年とされています。また、古民家などのいわゆる伝統工法で建てられている建物は、メンテナンスによって、80年を超えるような建物も少なくありません。実際に築100年を超えている家が現存していて、そこに居住している人もいます。
古民家をリフォームするメリット
古民家が注目を浴びているのは、たくさんのメリットがあるからです。代表的な4つのメリットについて解説します。
躯体がしっかりしている
古民家は、躯体がしっかりしているものが多い特徴があります。木材は、メンテナンス次第では、1,000年を超える寿命があります。木の伐採後、200年を超えたあたりまで強度が増していき、その後、ゆっくりと落ちるのです。新建材と比べても、強度が高い木材がたくさん使われているため、躯体がしっかりしているのです。
また、古民家で使われている太い柱や梁は、現在ではなかなか入手することができず、希少性が高くなっています。
四季を快適にすごせる
古民家は、空調設備がまだまだ整っていない時代に作られたものが大半です。日本の四季に適用できる工夫が随所に凝らされているため、四季を快適に過ごせます。自然素材が持つ調湿効果や風通しの良い造りなどをいかしたリフォームを心がければ、さらに快適な環境になるでしょう。シックハウス症候群にもなりにくいとされています。
古き良き日本の風情がある
古民家には、日本の古き良き風情が残された物件がたくさんあります。日本建築ならではのデザインを楽しめるだけでなく、高額な建築費用をかけて建てられた家に、安価で住むことができるのです。年数を経れば経るほど、強度を増す木材の風合いを引き出すリフォームができれば、外観だけではなく室内も安心と暖かさを感じられるでしょう。
固定資産税が軽減できる
固定資産税は、新築であれば固定資産税評価額に、1.4%の税率を掛けた税金を納めなければなりません。1.4%という数字は課税標準税率です。古民家は、経年減価補正により課税標準税率が軽減されます。木造住宅で築27年以上の古民家であれば、税率は0.2%になるため、大幅に固定資産税を軽減できます。
古民家をリフォームするデメリット
伝統工法で作られている大半の古民家は 現在の住宅に適用される事が多い、軸組工法とは違い、基礎部分のコンクリートが無い事が多く、むき出しの土の上に建物が建っているケースが多いです。耐震性を持たせた構造補強を検討すると共に、床下から上がってくる湿気の処理や隙間風の対処、小さな虫等への対策は必須となるでしょう。
風通しが良い事で、木造の建物が長持ちする事は実証されていますが、季節によっては住んでいる人にとって、弊害やストレスになるケースもあります。
一つ一つの空間が大きく、間仕切りも襖戸一枚だったり 天井の高さが通常よりも高い事があるので、エアコンや暖房設備の効きが悪く光熱費などが嵩んでしまう事もあります。
このようなデメリットを解消できるような、リフォーム・リノベーションを検討しましょう。
古民家の主なリフォーム方法と価格相場
古民家の使えるものは使い、使いにくいものをリフォームするという考え方があります。ここでは、主なリフォーム方法と価格相場について解説します。
【古民家リフォーム1】耐震工事
古民家のリフォームで、大切なのは耐震工事です。躯体がしっかりしていたとしても、地震により建材や建具がダメージを受ける可能性もあります。まずは耐震診断を行い必要に応じて、耐震工事を施しましょう。
【耐震工事の価格相場】
・耐震診断:20万円~40万円
・筋交いや金具の設置:20万円~25万円/箇所
・外壁の補強材設置:50万円〜
・屋根の軽量化:80万円~120万円/坪
・耐震パネル設置:60万円~70万円/箇所
建物の大きさや築年数状態によって、相場よりも多くの費用が発生する可能性もあります。
【古民家リフォーム2】断熱化
古民家は、通気性の良さが特徴です。中には断熱材が使われていない古民家もあるため、断熱のリフォームは欠かせません。断熱化により光熱費を下げる効果も期待できます。
【断熱化の価格相場】
・天井の断熱化:1㎡あたり4,000~8,000円
・床下の断熱化:1㎡あたり4,000~8,000円
・壁面の断熱化:1㎡あたり4,000~30,000円
・窓を二重にする:1窓8万円程度
・外壁や屋根の断熱塗装:外壁1㎡あたり2,300~4,500円、屋根3,000~6,000円
古屋の構造や使用する断熱材により、価格が大きく変わることを考慮する必要があります。
【古民家リフォーム3】間取り変更
古民家の間取り変更は、スケルトンリフォームやリノベーションでは容易です。古民家では小さな部屋が多いため、使いにくく感じられるかもしれません。複数の部屋を1つの部屋にするためには、耐震性耐久性を考慮して、骨組みの補給をしながらリフォーム工事を行います。
【間取り変更の価格相場】
・間仕切り壁の撤去:7~23万円/箇所
・間仕切り壁の設置:8万円~25万円/箇所
骨組みの補強についての価格相場を知りたい場合は、相見積もりを取ることを検討してください。
【古民家リフォーム4】水回り
古民家の水回りは、不便で不衛生なことが多いため、リフォームにより新しいものと交換することが望ましいでしょう。水回りは、毎日使うものなので古いものだと不便を感じることも多々あります。
【水回リフォームの価格相場】
・トイレ交換:20~60万円/箇所
・キッチン交換:50~150万円/箇所
・浴室交換:100万円程度/箇所
間取りの変更と合わせて水回りの移動をする際には、水道管やガス管、電気配線などのライフラインの配管・配線も合わせて移設になるので、上記金額にプラスアルファでリフォーム費用が掛かります。
また、選択するキッチンやトイレなどの種類によって、価格が大きく異なることが注意点です。
【古民家リフォーム5】バリアフリー
バリアフリー工事は、将来を見据えた環境づくりだけではなく、万が一のことに備えて古民家のリフォームとともに施しておくことがおすすめです。段差をなくしたり手すりをつけたりするだけでなく、引き戸に変更したり、滑りにくい床材に変えたりするなど、さまざまなバリアフリー工事があります。
【バリアフリーの価格相場】
・階段昇降機の設置(屋内直線用階段昇降機):60万円~
・スロープ設置:12~20万円/箇所
・引き戸に変更:10~20万円/箇所
・手すりの取り付け:3~10万円/箇所
・廊下の張替え:20~60万円/坪
古民家のリフォームでは補助金の活用を
古民家のリフォーム工事については、自治体によって補助金が出る制度があります。上手に利用すれば、リフォーム費用を抑えることができるため、古民家が所在する自治体で確認することをおすすめします。
【主な古民家リフォームの補助金制度】
・耐震工事での補助金制度:耐震工事費の50%から100%を補助してくれるケースがある
・古民家の再生補助金制度:リフォームやリノベーション工事にかかった費用の50%を補助してくれるケースがある
・バリアフリー改修等事業補助金制度:介護保険による補助金制度であり、最大90%の補助が受けられる
まとめ
古民家は、躯体がしっかりしているものが多いため、リフォームするメリットがたくさんあります。又、デメリットになる内容もしっかり理解した上で、リフォームを検討しましょう。
古民家のリノベーションは極一部であり、使えるものを取り壊さず、使えないものをリフォームする施工が大多数を占めているのが現状です。
※当ページのコンテンツや情報において、カインズリフォームでは、取り扱いが異なる場合がございます。