「自宅をリフォームしたいけど、欠陥工事に当たってしまったらどうしよう…」
このような悩みから、なかなかリフォームに踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。
そんな方におすすめなのが、リフォームの「瑕疵保険」です。瑕疵保険に加入すれば、万が一リフォーム後に欠陥が発覚した場合に、無償で補修を受けることができます。
この記事では、瑕疵保険のメリットやデメリット、実際の加入方法や費用相場まで詳しく解説します。これからリフォームを検討している方は、適用条件や保険料などをよく確認し、加入するかどうか検討してみてください。
リフォームが保証される瑕疵(かし)保険とは?

「瑕疵(かし)保険」と聞いても、いまひとつピンとこない方がほとんどでしょう。そもそも「瑕疵」という言葉は日常的に使うことがないため、はじめて読み方を知ったという人も多いかもしれません。
そこでまずは、瑕疵保険の意味や概要を解説します。
瑕疵(かし)とは?
「瑕疵」とは、もともと傷や欠点という意味で、法律では通常あるべき品質が欠けていることを指します。つまり、リフォームにおいては、契約時に約束した性能や品質が確保できていない状態を「瑕疵」と呼びます。
たとえば、屋根をリフォームする際は、雨を室内に通さないための防水性が必要とされます。もしリフォーム後に屋根から雨漏りが見られればそれは瑕疵の状態に該当し、リフォームに欠陥があったと判断されます。
瑕疵保険は事業者が加入する保険
保険と言うと、生命保険や自動車保険のように利用者が加入するイメージが強いでしょう。しかし、リフォームにおける瑕疵保険は、利用者の意思だけで加入することはできません。瑕疵保険を利用するには、前提として瑕疵保険に加入している事業者にリフォームを依頼する必要があります。
リフォームの瑕疵保険は、利用者、リフォーム会社、保険会社(住宅瑕疵担保責任保険法人)の三者を結ぶものです。瑕疵保険に加入していないリフォーム業者を利用するときは、リフォーム業者に瑕疵保険に加入するよう依頼するのも選択肢の一つです。
国土交通大臣が指定する「住宅瑕疵担保責任保険法人」とは?
瑕疵保険を提供しているのは、国土交通大臣が指定する「住宅瑕疵担保責任保険法人」のみです。
住宅瑕疵担保責任保険法人には、現在以下の5つの法人があり、いずれも日本全国を対象としています。リフォーム業者は、5社の中から好きなものを選び、保険契約を締結することができます。
- (株)住宅あんしん保証
- 住宅保証機構(株)
- (株)日本住宅保証検査機構
- (株)ハウスジーメン
- ハウスプラス住宅保証(株)
加入業者は公開されている
瑕疵保険に加入している業者は、各社の公式ページに公開されています。
たとえば、JIOの(日本住宅保証検査機構)の公式ホームページには「届出・登録事業者検索」があり、地域を絞って業者を検索できます。瑕疵保険に加入してリフォームをしたい人は、事前にこうしたサイトから対象業者を確認しておきましょう。
なお、サイトによっては加入業者の保険利用件数を確認することができます。いずれも各協会の審査を受けたうえで登録されているため、質の高いリフォーム業者が多いと考えられます。
リフォーム瑕疵保険を利用するメリット

リフォームにあたり、「瑕疵保険を利用しようか迷っている」という方も少なくないでしょう。瑕疵保険を利用するメリットとしては、主に以下の5つが挙げられます。
- 第三者の建築士による検査がある
- 質の高いリフォーム業者が多い
- 欠陥が見つかったら補修してもらえる
- リフォーム会社が倒産しても保険金が支払われる
- トラブルが起きたら専門家に相談できる
第三者の建築士による検査がある
瑕疵保険の加入業者にリフォームを依頼すると、リフォーム後に第三者の建築士により検査を受けることができます。
検査員は「第三者」であることがポイントで、これにより公正な検査が可能となります。また、検査は工事内容に基づく「設計施工基準」に準拠しており、チェック項目に基づいて細かくリフォーム内容を見てもらうことができます。
質の高いリフォーム業者が多い
瑕疵保険に加入できる業者は、各保険法人の厳しい審査基準をクリアした業者のみです。そのため、技術力の高い業者が多く、利用者としても満足のいくリフォームになりやすいでしょう。
さらに、瑕疵保険はリフォームをおこなうすべての部分に適用されます。そのため、欠陥のある箇所が対象外となることはなく、所定の条件さえ満たしていれば確実に補償を受けることができます。
欠陥が見つかったら補修してもらえる
第三者の検査により欠陥が発覚した場合には、施工を行ったリフォーム業者により再度補修を受けることができます。
補修費用は保険法人から事業者に支払われるため、利用者が負担することはありません。補修によって自宅の一部が使えないなどのデメリットはありますが、確実にリフォームを完遂してもらえるのは利用者にとっても安心につながるでしょう。
リフォーム会社が倒産しても保険金が支払われる
万が一、補修が必要なときにすでにリフォーム会社が倒産してしまっていた場合は、補修に必要な費用を保険法人に請求することができます。
そのため、リフォーム業者が廃業していたとしても、利用者が泣き寝入りとなる心配はありません。請求した補修費用をもとに、別のリフォーム会社に依頼して欠陥部分を直してもらうことができます。
トラブルが起きたら専門家に相談できる
リフォームに関するトラブルが生じたときには、電話などにより専門家に無料で相談することができます。相談料は無料であることが多く、利用者が負担を強いられることはほぼありません。
また、場合によってはリフォーム業者に「瑕疵保険に加入してほしい」とお願いすることでトラブルになってしまうこともあるかもしれません。こうしたトラブルについてももちろん専門家に相談でき、必要であれば裁判を除く法的な解決手続を利用することもできます。
リフォーム瑕疵保険の費用&加入条件

リフォーム瑕疵保険では、対象となる費用から適用期間までさまざまな条件が定められています。実際の利用までの流れも交えつつ、瑕疵保険の概要を確認しましょう。
保険料
瑕疵保険の保険料は、リフォーム内容によってさまざまです。相場としては約3~10万円を目安にするといいでしょう。
実際のリフォーム費用と保険料の相場は以下の通りで、リフォームにかかる費用の約1~3%が保険料の目安となります。
- 100万円:約3万円
- 200万円:約4万円
- 300万円:約5万円
- 500万円:約7万円
- 1,000万円:約9万円
また、契約内容によっては「支払限度額」が設定されていることがあります。たとえば支払限度額が1,000万円の場合、リフォーム費用が1,000万円を超えても、支払われる保険金は1,000万円となります。実際の費用を知りたい人は、リフォーム前に業者を通して費用の見積もりを取っておくと安心でしょう。
なお、保険料の支払いは加入業者と利用者のどちらが支払うべきかという明確な基準はありません。基本的には利用者が支払うことになりますが、リフォーム業者に負担してもらえないか相談してみるのも1つの手でしょう。
保険金の支払い対象
瑕疵保険の支払い対象となるのは、主に以下の3種類です。
補修に必要な費用にくわえ、調査費用や仮住まい費用なども対象となります。リフォーム期間中にホテルなどに宿泊する場合は、忘れずに領収書を保管するようにしましょう。
保険金の計算方法
瑕疵保険の保険金は以下の計算式によって算出されます。
【支払われる金額=(補修費・調査費-10万円)×80%】
たとえば、補修費と調査費の合計が200万円の場合、実際に支払われる保険金額は152万円となります。ただし、リフォーム事業者の倒産による瑕疵の場合には100%の金額が支払われます。
適用期間
瑕疵保険が適用される期間は、大きく1年、5年、10年の3パターンに分けられます。
5年と10年にはそれぞれ適用条件が明確に定められており、それ以外の項目は全て1年となります。
なお、保険期間は原則として「工事完了確認日」から開始します。「工事完了確認日」とは、居住者とリフォーム業者が互いに工事完了の確認をおこなった日を指します。
保険適用期間 |
基準 |
対象例 |
5年 |
・構造耐力上主要な部分が、基本的な耐力性能を満たさない場合
・壁や柱、床や屋根などが、建築基準法レベルの構造耐力性能を満たしていない |
・雨水の浸入を防止する部分が、防水性能を満たさない場合
・リフォーム箇所から雨漏りが発生した |
1年 |
上記以外のリフォーム箇所で、社会通念上必要とされる性能を満たさない場合 |
配管工事後における水漏れ、コンクリート部分の大きなヒビ割れ等 |
10年(増築特約) |
5年のケースと同様 |
5年のケースと同様 |
【5年】
保険適用期間が5年になるのは、大きく以下の2通りです。
- 構造耐力上主要な部分が、基本的な耐力性能を満たさない場合
- 雨水の浸入を防止する部分が、防水性能を満たさない場合
「構造耐力上主要な部分」とは、主に壁や柱、床や屋根など、建物の土台になる部分を指します。いずれも耐震基準を満たす必要があり、耐力性能が不十分となれば保険の対象となります。
また、「雨水の浸入を防止する部分」とは、窓や屋根、外壁などを指します。リフォームから5年以内に雨漏りが発生した場合は、防水性能が不十分と判断でき、保険の対象になります。
【1年】
保険適用期間が5年の項目に該当しない場合、基本的に保証期間は1年間となります。
保険適用の判断基準になるのは、「社会通念上必要とされる性能」があるかどうかです。リフォームとの直接的な因果関係が不明であっても、明らかにリフォームによって悪化した場合には保険の対象となる可能性が高いでしょう。
主な事例としては、壁のひび割れや亀裂、配管からの水漏れや建具のガタつきなどが挙げられます。適用期間が1年と短いため、欠陥を見つけたときは早めに手続きを進めることが大切です。
【10年】
自宅の基礎部分を増改築するときは、「増築特約」として10年間の保証を受けることができます。補償の対象は以下の2パターンで、保証期間が5年のケースと内容は変わりません。
- 構造耐力上主要な部分が、基本的な耐力性能を満たさない場合
- 雨水の浸入を防止する部分が、防水性能を満たさない場合
なお、増築工事部分であっても、基礎構造部分以外の内装工事などは対象にはなりません。あくまで基礎部分に欠陥が見つかったときにのみ適用となるため、注意が必要です。
請求~支払いの流れ
もしもリフォーム後に欠陥が見つかった場合は、以下の手順により瑕疵保険を請求することができます。
- 補修工事の請求:まずはリフォーム会社へ連絡し、補修工事を依頼する
- 補修工事の実施:保険会社の査定に基づき、リフォーム会社が補修工事を実施。住居人の費用負担はない。
- 保険金の請求:リフォーム会社は補修工事完了後、保険会社に「補修工事完了報告」を提出して保険金を請求する
- 保険金の支払い:保険会社が補修工事の内容を確認し、リフォーム会社へ保険金を支払う
補修工事を依頼するにあたり、住居人が費用を負担することはありません。保険の請求は、リフォーム業者と保険会社の間でやりとりされることになります。
なお、リフォーム業者がすでに倒産していて補修工事を実施できないときは、住居人が保険会社に直接保険金を請求することができます。受け取った保険金をもとに、ほかのリフォーム業者に依頼して補修工事を受けることができます。
リフォーム瑕疵保険の適用条件

最後に、リフォーム瑕疵保険が適用される条件を確認しておきましょう。場合によっては瑕疵保険の対象外となるリフォームもあり、たとえ欠陥があっても保険金を受け取ることはできません。
対象となる住宅
基本的に瑕疵保険はすべての家に適用され、建物の構造や工法、築年数などによって適用可否が変わることはありません。基準になるのは「既存住宅と一体となった設備」かどうかで、建物内の設備ならキッチンやトイレ、屋根や外装などにも適用されます。
ただし、共同住宅の場合や工事基準によっては以下の通り対象外となることもあります。
共同住宅 |
・3階建て以下で、なおかつ500㎡未満の共同住宅
・4階建て以上、もしくは500㎡以上の共同住宅は、各住戸の内部(賃専有部分)のリフォーム工事のみが対象 |
工事基準 |
・「住宅保証機構指定の保証書」で、リフォーム工事請負契約に基づいた「瑕疵担保責任」の契約をしていること
・設計施工事基準(住宅保証機構が定めているもの)に適合するリフォーム工事であること
・「構造耐力上主要な部分」をリフォームする場合は、新耐震基準に適合した住宅であること |
外構工事は対象外
瑕疵保険の適用外となるケースとして、「外構工事」が挙げられます。
「外構工事」とは、リフォームに付随する工事のことで、具体的には解体や撤去作業、清掃などが含まれます。瑕疵保険を利用したい人は、リフォーム費用の見積もりを取ったときに外構工事費用はをわけておくと、いざというときに対象金額を計算しやすいでしょう。
なお、地震や台風などの自然災害や、居住者の過失による破損なども対象外となります。あとになって「そんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、適用条件は入念に確認しておくようにしましょう。
リフォーム瑕疵保険はリフォームの安心材料になる

瑕疵保険は居住者が任意で加入できるものであり、けっして強制加入ではありません。
保険料として3~10万円ほど必要になりますが、「リフォーム後に欠陥が見つかったけど、何も対応してもらえない」となるリスクを考えたら、保険料を支払う価値は十分にあるでしょう。
瑕疵保険はこれからリフォームをする人にとって、安心材料になりうる制度です。万が一のリスクを回避したい方は、各保険法人の公式ホームページなどから加入業者を検索してみてください。
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