「自宅にカーポートを設置したら、固定資産税がかかる」という話を聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。本当にかかるものなのか、当記事では固定資産税の概要やカーポートと固定資産税との関係、カーポートの設置でよく話題にのぼる「建ぺい率」などについて、詳しくご説明していきます。

カーポートに固定資産税はかかる?
「カーポートを設置すると固定資産税がかかるのかどうか」という点に言及する前に、固定資産税とは一体どのような仕組みの税なのか理解を深めておきたいところです。まずは、固定資産税の概要について見てみましょう。
そもそも固定資産税とは?
固定資産税とは、土地や家屋、償却資産といった固定資産の所有者に課される地方税のこと(地方税法第343条第1項)です。戸建て住宅などの建物やその土地、田んぼや畑、駐車場などが含まれるため、土地や建物を数多く所有していれば、それだけ固定資産税が課されることになります。
固定資産税の課税対象になる家屋は、登記がされているか否かを問いません。1月1日時点の所収者に対し、1年分の税金が課税されます。なお、各市町村の固定資産課税台帳に登録されている評価額に対し、原則として1.4%を掛け足したものが税額です。
課税対象となる建物の要件
このように建物にも課税される固定資産税ではありますが、課税の対象となる建物とは一般的に以下の3要件を満たすものを指します。
「屋根」があり「三方向以上の周壁」がある建物のことです。壁などで囲われていないものについては、外気分断性は認められません。
基礎などで土地に定着している建物であることです。コンクリートで固定するなどして、物理的に土地に固着している状態を指します。そのため、地面の上に「置いただけ」の物置やコンテナなどは、当てはまりません。
居住や作業、貯蔵といった目的で利用できる状態にある建物を意味します。
カーポートは基本的に課税対象ではない
カーポートには「屋根」があります。そして、柱で土地に「固定」されているので、上記のうち2つの要件には当てはまります。しかし、外気分断性という点に関して、側面や背面に壁は設置されてはいないので「三方向以上が壁で囲われている」という条件には該当しません。このことから、カーポートは固定資産税の課税対象ではないことがわかります。小さい1台用でもそれ以上の台数用でも、3方向以上が壁で囲われていない限りは固定資産税が課税されることはありません。

固定資産税がかかるカーポートもある

柱と屋根という構造のカーポートは、建築物ではありますが固定資産税の課税対象ではありません。しかし、一部のカーポートは課税の3条件を満たします。それは、「ガレージタイプ」のカーポートです。ガレージは、箱状の建築物であり、左右と奥行きの3方向以上が壁に囲われます。そのため、車の出入口にシャッターが付いていてもいなくても課税の対象となります。また、壁の素材が鉄板ではなくポリカーボネートの場合でも、3方向以上が囲われていれば建物とみなされ、課税される可能性があります。

カーポートの建ぺい率と固定資産税に関係はある?
一部を除き、カーポートに固定資産税は課税されないということがおわかりになったと思います。続いて、同様に話題にのぼることが多い「建ぺい率と固定資産税の関係」について、検証していきます。
建ぺい率とは?
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築可能な面積の割合100平方メートルの土地の建ぺい率が60%であれば、住宅の最大の床面積は60平方メートル、80%であれば、80平方メートルということになります。
それでは、なぜ建ぺい率というルールが決まっているのでしょうか。たとえば、住宅が密集している地域で、全ての住宅が土地の広さいっぱいに建てられているとします。そのような場所で火災が発生すると、すぐ近隣の住宅に延焼してしまいますし、火が燃え広がることから避難経路を確保することも難しいでしょう。こうした状況にならないために、建ぺい率というルールが設けられています。各市町村によってそれぞれ都市計画が策定されているので、地域によって建ぺい率のパーセンテージも異なります。
カーポートは建ぺい率の対象
カーポートは柱と屋根のみの構造物ということで、何の制約もなく建てられると勘違いされがちです。しかし実際にはカーポートも建築物として扱われるので、建築基準法が適用されます。建築基準法によって、カーポートの面積は建ぺい率の計算に算入されるため、新築住宅の場合、敷地の建ぺい率が低いとカーポートを広くすると住宅部分を狭くしなければなりません。反対に、住居を建ぺい率の目一杯まで広くしてしまうと、カーポートを設けるスペースが無くなってしまいます。このように、カーポートを設置する際には、建ぺい率にも気を配らなくてはなりません。
建ぺい率の緩和措置がある
基本的にカーポートは建ぺい率に算入されますが、「高い開放性を有する建築物」という条件を満たすことで、「建築物の端から1メートルの部分を、建築面積に含めなくても良い」という緩和措置が適用されます。その緩和条件は、以下の4つです。
- 柱の間隔が2メートル以上である
- 天井の高さが1メートル以上である
- 外壁のない部分が連続して4メートル以上である
- 地階を除く階数が1(1階建て)である
一般的なカーポートであれば上記4つの条件に当てはまり、カーポートの一部を建ぺい率に含めずに済む可能性が高いと言えます。結果として、住居部分の面積を減らさずに済みます。
関連記事:カーポートの建ぺい率とは?|適用の条件や計算方法について解説
建ぺい率と固定資産税は別の問題
「カーポートを設置すると、固定資産税がかかる」という誤解は、どこから発生したのでしょうか。きっかけが判明しているわけではありませんが、どうやら「カーポートが建ぺい率の対象に含まれる」という点が関係しているようです。
カーポートは、固定資産税が課税される家屋には該当しないものの、建築基準法では建築物として認識されるので、建ぺい率の算入対象となります。新築住宅の場合、建ぺい率が上限に近い状態でカーポートを建ててしまうとオーバーする可能性が高く、検査に通らないかもしれません。その点を考慮して、ハウスメーカーは住宅の買い手に対して「カーポートは住宅の引き渡しが終わってから設置するのがいい」というアドバイスをすることがあります。
上記のようなやりとりが、「カーポートを設置するのは、固定資産税の調査が終了してからのほうがいい」という話にすり替わってしまい、やがて「カーポートの建ぺい率は固定資産税と関わりがある」というように誤解されるようになったものと考えられます。つまり、カーポートの建ぺい率と固定資産税の額は、別の問題なのです。

カーポートを設置する際に気をつけるポイントや注意点

カーポートの設置において、まず敷地の建ぺい率はしっかり確認しなければなりません。では、他にも確認すべき点はあるのでしょうか。こちらでは、カーポートを設置する際に気をつけるべきポイントや注意点をご紹介します。
建築確認が必要な場合もある
建築物は、建築基準法や関係する法律を守っているかどうかをあらかじめ申請して確認してもらうというプロセスが発生します。この手続きを、「建築確認」と呼びます。
建築確認は全ての建築物に当てはまるわけではなく、建築面積が10平方メートル以上の建築物にのみに求められます。さらに、カーポートなど壁がなく開放性のある建築物は、「建築面積の端から1メートル以内までは建築面施には算入されない」という緩和措置が適用されます。そのため、車1台分の大きさのカーポートであれば、10平方メートル以下のものが多いので、建築確認は必要ない場合がありますが、屋根面積が10平行メートル以上を超える場合は、建築確認申請が必要となります。2台分以上となると1台分の倍近く面積は広がるので、建築確認申請が必要になると考えたほうがよいでしょう。申請を怠ると、当局から撤去の命令が出されることもあるので、気をつけてください。
自由に建てられるのではなく制限がある
地域によって差はありますが、建ぺい率によってカーポートは制限を受けることになります。また、カーポートの柱や屋根の素材についても同様に、自由に使えるというわけではありません。
たとえば、カーポートを設置しようとしている場所が、住宅密集地など火災時に延焼の恐れがある「防火地域」「準防火地域」「建築基準法22条指定区域」に入っている場合、建築物は「防火に対する規制」を受けます。その地域内では、使用できる素材が防火に優れた素材に限られます。このように、カーポートの設置について制限を受ける地域があるので、心配なら自治体に問い合わせるなどして、自分が住んでいる場所がどのような地域なのか確認しておきましょう。
関連記事:カーポートの後付けで気をつけるポイントを解説|自宅にカーポートを設置したい方必見!

カーポート固定資産税のまとめ
一般的に、開放性の高いカーポートは設置することで固定資産税が課税されることはありません。しかし、ガレージタイプの場合は課税されることになるため、選択する際にはあらかじめ注意が必要です。また、どのタイプなら課税の対象になるのかはっきりわからない、建ててからトラブルになるのは避けたいという場合は、自治体にあらかじめ問い合わせをしてから設置の検討を始めるといいでしょう。

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