雨風や雪、紫外線から車を守る「カーポート」は、設置時に建築確認申請が必要になるケースがあります。申請を行わずに設置した場合、罰金や撤去命令が言いわたされるかもしれません。この記事では、カーポートの設置を検討している人に向けて、建築確認申請について必要となる条件や申請方法について解説します。

カーポートとガレージの違い
車庫として使われるカーポートと似た概念のものに、ガレージがあります。どちらも車を停めるところとして同じようなものだと思われがちですが、カーポートとガレージの違いはどこにあるのでしょうか。それぞれの違いを解説します。
ガレージとは
ガレージとは、周囲が壁で囲まれている車庫のことをいいます。周囲が囲まれている、という部分が肝心です。ガレージにはシャッターや扉がついており、中は完全に四方を囲まれた部屋のようになります。
ガレージでは雨風が入り込まないため、車を停めるだけではなく、風雨を避けたいさまざまなものを収納することが可能です。カーポートに比べて防犯性も高く、中のものをしっかり守ることができるのはガレージのメリットといえるでしょう。
カーポートとは
カーポートとは、壁がなく、柱と屋根だけで構成されている駐車スペースのことをいいます。柱の本数は、デザインによって2~4本以上などさまざまです。柱からアルミなどの金属を用いて屋根の骨組みを持ち出し、ポリカーボネートなどの板を張って雨よけとします。
カーポートは簡易的なつくりのため、建築確認申請が必要ないように見えますが、確認申請が必要になることがあります。カーポートを設置するときは必ず、建築確認申請を必要とするケースに該当するかどうかを確認しておきましょう。
関連記事:カーポートとは?プロが教えるカーポートの種類と選び方
関連記事:おしゃれ・かっこいいカーポート! 費用や選び方を解説

カーポートを建てるときに必要な建築確認申請とは?
建築物を建てる場合は、建築基準法や都市計画法などに定められるとおり、建築確認申請が必要になります。
カーポートは人が住むわけではなく、ただ車を停めるだけなら建物とはいえないのではないかと思うかもしれません。しかし実際には、カーポートは土地に定着しており、柱と屋根があることから、法律上は建築物とみなされてしまうのです。
建築確認申請が必要になる条件は詳しく後述しますが、建築確認申請を怠ることのないように気をつけましょう。

カーポートの建築確認申請に関する法律
建築確認は法律で義務づけられているため、申請を怠ることでかえって面倒なことになるかもしれません。カーポートの建築確認申請をしなかった場合、どのようなことが起きるかを解説します。
建築基準法第6条
建築基準法第6条は、建築確認申請について定められた法律です。カーポートも建築物だとみなされるため、設置時には建築確認申請をするよう定められています。申請義務があるにもかかわらず、手続きしないままカーポートを設置してしまうと、建築基準法第6条に抵触するかもしれません。
建築基準法第6条への違反は、端的にいうと違法建築になるため、相応の罰則が適用されるケースもあります。万が一カーポートをDIYしたケースであっても、所定の申請を怠らないようにしましょう。
建築基準法第53条
建築基準法第53条は、敷地面積に対する建物の建築面積、いわゆる「建ぺい率」を定めている条項です。建ぺい率をオーバーすると、違反と判断されます。
建ぺい率は、火災対策や日当たりの確保、景観保全のために定められている部分が大きく、建ぺい率をオーバーすると都市計画の乱れにもつながりかねません。したがってカーポートを設置するにあたり、実質的な違反がある場合は、行政による指導が入る可能性が高くなります。

カーポートの建築確認申請が必要となる条件
カーポートの建築確認申請が必要になる条件にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、カーポートの建築確認申請が必要になる条件について解説します。設置予定のカーポートが条件にあてはまるかどうかをチェックしてください。
屋根がついている
カーポートには、車を雨や紫外線から守るための屋根がついています。屋根がついている設置物は基本的に「建物である」とみなされるため、建築確認申請が必要です。屋根については、例外となるカーポートはほとんどないでしょう。
基礎が地面に固定されている
業者がカーポートを設置する際、地面を掘り下げて柱を打ち込み、コンクリートを流すなどして固定するのが一般的です。カーポートの柱を地面に打ち込んでいれば、基礎が地面に固定されているものとして、建築確認申請が必要になります。
床面積が10平方メートルを超えている
床面積が10平方メートルを超えているものについては建築確認申請が必要です。カーポートの場合、床面積が10平方メートルを超える場合がほとんどのため、建築確認申請をしなくてもよいケースはまずないといえるでしょう。

カーポートの建築確認申請の方法
カーポートの建築確認申請の方法は、自ら主導して進めるか、業者にすべて代行してもらうかの二択です。建築確認申請は建築士の仕事なので、誰でも実施できるわけではありません。必要書類を準備したあとは、建築士にハンコを押してもらう必要があります。ハンコを押してもらうには費用がかかる場合があるため、事前に確認が必要です。
自分で確認申請する方法
まずは着工前に市役所や県庁の建築指導課に問い合わせ、建築主事へ建築確認申請を行います。着工前と施工後の写真や専門書類などの用意が必要です。申請後、問題なければ建築確認済証が交付され、工事ができる段階に入ります。工事が完了したら、建築主事による完了検査を実施しましょう。
施工業者に代行してもらう方法
建築確認申請は基本的に施主が行います。しかし、申請には図面や計算表など専門的な資料が必要です。一般の人では理解が難しい部分があるため、専門家に代行をお願いする人も多くいます。建築確認申請を代行してほしい場合は、施工会社に対応可能か事前に確認してみてください。

カーポートの建築確認申請をしないとどうなる?
建築確認申請が必要な条件にあてはまっているにもかかわらず怠った場合は、何かしらの罰則を受ける可能性があります。ここでは、建築確認申請をしなかった場合の罰則について解説しますので、リスクを把握しておきましょう。
施主に懲役・罰金が課される
カーポートの着工前に建築確認を申請せずに工事を始めてしまうと、無許可工事として1年以下の懲役または100万円以下の罰則を課せられます。罰則を受けるのは施工会社に工事を依頼した施主です。
また、工事を止めるように自治体から警告を受けているにもかかわらず命令を無視し続けた場合は、3年以下の懲役または300万円以下の罰則が課せられます。この罰則を受ける対象者は、施主と工事を依頼された業者です。
違法建築物として住所が公表されるリスクがある
自治体によっては違法建築物に対して厳しい目を向けています。そのような地域に無許可でカーポートを設置すると、住所や写真、連絡先などを公表されてしまうリスクがあるため注意してください。
違反建築物の情報が公表されると、所有者の住所まで特定できて調査が入る可能性が高くなります。不特定多数の人が住所を知ることになるため、必ず建築確認申請をしましょう。
撤去命令が出る可能性がある
自治体は、違法建築物に対して工事中断や使用制限などの命令を出せます。指示書や口頭による行政指導を無視続けると、撤去を言いわたされます。同時に、違法建築物に引き込まれている水道や電気なども止められてしまう可能性もあり、生活に支障が出るでしょう。
売却できない可能性がある
今後、不動産を売却することになったときは、建築確認申請をしていないカーポートについて、重要事項説明書に「違反がある建物である」と記載しなければなりません。
また違反のない不動産については検査済証が交付されます。検査済証とは建築基準法に基づき、施工完了時に完了検査を行った結果、建築物とその敷地が法的に問題ないことを示す証明です。この検査済証がない場合は取引に際して融資が受けられないため、売却が困難になります。

カーポートの建築確認申請をしなかった場合、どのように発覚する?
カーポートの建築確認申請が必要であるにもかかわらず申請しなかった場合、どうなるのでしょうか。一見して発覚しないのではないかと思うものですが、実際には後から発覚する可能性が高いので注意が必要です。具体的にどのように発覚するかについて解説します。
自治体のパトロールにより発覚する
自治体によっては建築確認申請の違反について正確に状況を把握するために、定期的にパトロールをしている場合があります。建築確認申請をしていない場合、「確認済みの表示」の看板がないため、パトロールですぐに発覚してしまうのです。
近隣の通報により発覚する
近隣に建築に詳しい住人がいる場合、工事の様子などから新しいカーポートが建ったことはすぐに知られてしまいます。そこで建築確認申請をしていないのではないか、と怪しまれる可能性があるのです。行政に通報が入れば確認が行われるため、発覚につながります。

カーポートを建てる場合のポイント
カーポートを建てる際は、着工前に建築確認申請の要件を確認し、該当する場合は申請しましょう。申請を怠ってしまうと、上述したようなさまざまな問題につながります。
建築確認申請というと難しい用語に聞こえ、「申請をすると税金が高くなるのではないか」「自分に何か不利益があるのではないか」と思うかもしれません。しかし建築確認申請をしなくても、先述したとおり、後から違反が発覚する可能性があるだけではなく、いざというときに売却が困難になるなどのデメリットがあります。不利な状況にならないためにも、必要に応じて申請をしましょう。

建築確認申請のまとめ
あまり知られていませんが、カーポートを設置する際は建築確認申請が必要になる場合があります。申請を行わずにカーポートを設置すると、罰金や撤去を強いられてしまうケースも少なくありません。各自治体や敷地の形などにより必要条件が異なるため、詳しくはお住まいの自治体に確認してみてください。
関連記事:カーポート後付けの注意点|設置工事の費用や建ぺい率について解説
関連記事:カーポートの固定資産税はかかるの?金額はいくら?建ぺい率との関係も解説
カインズ・リフォームでも、建築確認申請を含めカーポートのリフォームのご相談を受け付けています。全国のカインズの店頭でも相談カウンターを設けていますので、ぜひ気軽にお問い合わせください。

※当ページのコンテンツや情報において、カインズリフォームでは、取り扱いが異なる場合がございます。