国土交通省の発表によると、1994年から2003年の10年間に、日本全土の97%で水害や土砂災害が起きています。30年以内には「南海トラフ巨大地震」「首都直下地震」が70%以上の確率で起こるとも予測されています。万が一の災害にそなえ、防災用品を詰め込んだバッグを用意している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
でもそれだけで安心するには不十分かもしれません。もし家が倒壊してバッグを持ち出せなくなってしまったらどうでしょう? 崩れた土砂や倒壊した建物で避難場所への道を塞がれてしまったらどうでしょう? 防災用品を保管する防災倉庫を自宅に設置していれば、より安全に自分や大切な人の命を守れるかもしれません。当記事では、防災倉庫の役割や設置するメリット、購入時のポイントなどを紹介します。

防災倉庫の役割とは?
一般的に防災倉庫と言えば、災害時の避難場所に指定された学校・公園・公民館などに設置されている倉庫を指します。ここでは、自宅用の防災倉庫の役割を説明します。
そもそも防災倉庫とは?
防災倉庫とは、火災・震災・洪水などの災害にそなえて、非常食・生活必需品・救出用具・調理器具などを保管しておく倉庫のことを言います。大きな災害が発生した場合、自宅から動けなくなる可能があります。そうなったときに、水道や電気などのライフラインが復旧するまでの間、救助がくるまでの間、避難場所に向かう道が開通するまでの間、支援物資が届くまでの間に、命をつなぐ防災用品を保管しておくことができる倉庫が「自宅用の防災倉庫」です。
ライフラインの復旧までにかかる時間
厚生労働省が2021年10月に発表した「厚生労働省業務継続計画」によると、首都南部直下(フィリピン海プレート内)でマグニチュード7.3、最大震度7の地震が起きる前提条件で、停電・断水・電話不通が解消するまで概ね1か月程度、ガス停止が解消するまで概ね6週間程度かかる見込みだそうです。ライフラインの復旧までに、長い時間を耐え忍ぶことになりそうです。
防災倉庫に保管する防災用品
防災倉庫には、リュックサックやバッグなどに入らない防災用品まで保管できる安心感があります。保管する防災用品は、以下が例としてあげられます。
- 食料・調理用品(非常食、ミネラルウォーター、調理用具、紙食器、缶切り、コンロなど)
- 燃料(発電機、充電器、給水タンク、乾電池など)
- 衛生用品(簡易トイレ、ポリ袋、ウェットティッシュ、手指消毒用アルコール、マスク、生理用品など)
- 衣類(着替え、レインコート、タオル、軍手など)
- 寝具(毛布、テント、寝袋など)
- その他(土嚢袋、ヘルメット、シャベル、ツルハシ、はしご、医薬品など)

自宅に防災倉庫を設置するメリットとは?

「防災用品ならバッグに詰めて家の中に保管しておけばよいのでは」。そうお考えの方もいらっしゃると思います。災害時に家の中の被害が少なく、スムーズに避難場所に移動できる状態であれば問題ないかもしれません。しかし、大きな災害が起きたときのことを想像すると、家の中が安全とは言い切れません。
たとえば大きな地震が起きたとき、食器棚が倒れて床にガラスの破片が飛び散るかもしれません。家中の家具が倒れて保管場所に続く通路が塞がれてしまうかもしれません。天井が崩れて家の中を移動できなくなる可能性もあります。そんな状況で防災用品の保管場所を冷静に思い出すことができるでしょうか。バッグを確実に外に持ち出せるでしょうか。
もし屋外に頑丈な自宅用の防災倉庫を設置しておけば、家の中に保管するより、安全かつ確実に防災用品を活用することができます。ライフラインの復旧に時間がかかる場合や避難場所への道が塞がれた場合も、一時的な避難場所として自分と大切な家族の命を守ってくれるでしょう。

防災倉庫を選ぶポイントとは?

ここでは、防災倉庫選びのポイントとなる機能や仕様を紹介します。家庭にとっての優先順位や日常生活での利用を踏まえて選ぶことをおすすめします。
防災倉庫の入り口がシャッター式のものは、バイクや自転車も収納できて便利です。
防災倉庫はサイズ展開が豊富。高さが1メートル以内のものから、高さが2メートルを超えるものまであります。
防犯のために施錠をしていても、大きな地震が発生した際に電源不要で自動的に解錠されます。
防災倉庫内部の急激な温度上昇や結露の発生が軽減され、非常食やミネラルウォーターを安全に保管できます。
扉の位置を前面・右側面・左側面・後面に変更できるものは、設置場所に悩まずに済みます。
自由に棚を配置できるため、こまごまとした防災用品でもキレイに整理整頓できます。
扉のカラーも豊富です。庭の雰囲気や自宅外壁のカラーリングに馴染むものを選ぶことができます。

防災倉庫選びで後悔しないための注意点

前述の通り、防災倉庫は機能や仕様が多彩です。ただ、それだけに目を奪われて選択をすると後悔するかもしれません。たとえば、防災倉庫の本体より屋根のサイズが大きいことや、基礎ブロックの上に防災倉庫を設置すること、低価格の防災倉庫は強度が弱いことなども考慮しながら防災倉庫を選ぶことが大切です。ここでは、購入後に後悔しないよう“失敗しやすいポイント”を紹介します。
サイズを間違えた!
「屋根の大きさ(屋根寸法)」は、「土台寸法(本体土台の大きさと奥方向への大きさ)」よりも大きめに設計されています。防災倉庫本体のサイズだけをみて購入すると、設置場所に収まらない可能性があります。購入を検討している防災倉庫の大きさを具体的にイメージする方法は、地面に防災倉庫と同じサイズの四角い線を描いてみること。想像より大きいのか小さいのかが容易に確認できます。屋根の大きさを考慮していない場合、防災倉庫はボリュームがあるため、想像以上に圧迫感が生じるかもしれません。
設置場所にスペースが足りない!
防災倉庫を設置する際には、10~20センチメートルの高さがある「基礎ブロック」の上に載せます。理由は、通気性を良くし、水平を保ち、雨水が防災倉庫の底部に直接触れることを防いで耐久性を維持するためです。設置場所の高さに制限がある場合は、本体と基礎ブロックを合わせた高さを考慮しなければなりません。また、防災倉庫を組み立てる際に、防災倉庫の左右と後方に20~25センチメートル程度の作業スペースが必要です。
扉が開かない!
開き戸タイプの防災倉庫の場合、扉を全開できるだけの奥行きが必要です。そのため、壁と壁の間に挟まれた狭いスペースでの利用はおすすめできません。狭いスペースに設置する場合は、開口部を横にスライドさせる2枚扉か3枚扉の防災倉庫がおすすめです。3枚扉の防災倉庫は間口部が広いため、よりスムーズに防災用品の出し入れができます。
強度が足りない!
価格が安い防災倉庫は、鋼板が薄く、強度が弱い傾向にあります。また、積雪地などの過酷な環境に向かないものがあるので注意が必要です。一般的な倉庫は積雪60センチメートルまで耐えることができますが、多雪地では積雪100センチメートルまで耐えられる多雪地型、豪雪地では積雪150センチメートルまで耐えられる豪雪地型の防災倉庫をおすすめします。なお、自宅の屋根から雪が落ちてくる場所に防災倉庫を設置すると倒壊の危険がありますので避けてください。
荷物が入らない!
「ひとまわり小さい防災倉庫にすればよかった」と後悔する人より、「ひとまわり大きい防災倉庫にすればよかった」と後悔する人が多いようです。設置場所のサイズを考えることと同様に、収納したい荷物の数や大きさに合わせて防災倉庫の大きさを決めると失敗しにくいでしょう。また開口部の仕様によって荷物の出し入れがしにくい場合があります。たとえば左右どちらかにスライドさせる2枚扉の場合、倉庫内の真ん中に置いた荷物は出し入れしにくくなります。
配送してもらえない!
防災倉庫のメーカーごとに、配送可能エリアが異なります。また、防災倉庫は完成品ではなくパーツごとに梱包された状態で届きますが、「大型倉庫の場合は引き渡し場所の近くまで、幅2〜3メートル前後の4トントラックが入れること」といった配送条件が設定されています。パーツの組み立て工事に対応してもらえないエリアもあります。思わぬ返品とならないよう、メーカーに配送条件を確認してから購入しましょう。

まとめ
災害時の避難場所に指定された学校・公園・公民館などに防災倉庫は設置されていますが、避難場所に行く道が寸断される可能性があります。家の中に防災用品を保管していても家が倒壊しすれば持ち出せなくなってしまいます。その点、家の外に防災倉庫を設置しておけば、大規模な災害発生時に1週間分の備蓄が望ましいとされている家族分の非常食・ミネラルウォーター・生活必需品・医療品などの防災用品を充分に備蓄しておくことができます。また、一時的な避難場所として役に立つかもしれません。自分と大切な人の命を守るために、防災倉庫の購入を検討してみてはいかがでしょうか。
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