トイレタンクに不具合が発生すると、便器に流れる水が止まらなかったりタンク内で水の流れる音がしたりと、さまざまな症状が現れます。今はトイレの使用に支障がない場合でも、そのまま放置しておくと、いずれ大規模な水漏れを起こす可能性があります。大掛かりな修理になる前に、不具合を発見したらできるだけ早く修理することが大切です。この記事では、トイレタンクの不具合で起こる症状やその原因、修理方法について解説します。トイレタンクの仕組みや修理費用についても合わせて解説します。
トイレタンクの不具合で起こる症状と原因

トイレタンクの不具合で起こりやすい症状と原因には、次のようなものがあります。
不具合 |
原因 |
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- フロートバルブやオーバーフロー管の劣化・破損
- レバーとフロートバルブをつなぐ鎖が切れている
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- タンク内でチョロチョロと音がする
- 給水が止まらない
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- レバーとフロートバルブをつなぐ鎖切れている・軸が折れている
- ボールタップのフィルターにゴミなどがつまっている
- ダイヤフラムの劣化
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トイレタンクの仕組みとそれぞれの不具合について詳しく解説します。
トイレタンクの仕組み・部品
一般家庭で使用されるロータンク式トイレの仕組みと主な部品について、解説します。トイレタンクは、次のような仕組みで動いています。
トイレタンクの仕組み
- レバーを回すとレバーにつながったフロートバルブが排水口から外れて、便器に水が流れていく
- タンク内の水位が下がると、浮き玉も下降する
- タンク内に水がなくなると、フロートバルブが戻り排水口がふさがれる
- 浮き玉とつながったボールタップが連動して開き、給水管からタンク内と手洗い管へ水が給水される
- タンク内に水が溜まると浮き玉が上昇し、連動してボールタップの栓が閉まり給水が止まる
トイレタンク内の主な部品
部品の名称 |
作用 |
フロートバルブ |
タンクと便器の間にある排水弁。弁が外れることでタンク内の水が便器で流れ出る。 |
浮き玉 |
タンク内の水に浮かんでいて水位と同じように上下する。ボールタップとつながっている。 |
ボールタップ |
浮き玉の動きと連動することで給水栓が開閉し、タンク内や手洗い管に給水される。 |
オーバーフロー管 |
細長い筒状の管。タンク内に給水された水が規定量を超えると便器へ排水される。 |
続いてそれぞれの不具合と考えられる原因、対処法について解説します。
不具合1 タンクに水がたまらない・便器に水が流れ続ける
原因 |
対処法 |
レバーとフロートバルブをつなぐ鎖が切れている |
新しい鎖と交換する |
フロートバルブの劣化・破損 |
フロートバルブを交換する |
オーバーフロー管の劣化・破損 |
オーバーフロー管を交換する |
レバーとフロートバルブをつなぐ鎖が絡まっている場合は解き、切れている場合は新しいものに取り替えましょう。また、フロートバルブにひび割れがあり隙間から水が流れ出ている可能性もあります。位置がずれているだけであれば、正しい位置に戻して完全に栓を閉じましょう。フロートバルブを触ると手が黒くなる場合や、ボロボロと表面がはがれてくる場合は交換のタイミングです。
オーバーフロー管が折れている場合やひび割れがある場合は、専門業者に修理を依頼するのがおすすめです。
不具合2 タンク内でチョロチョロと音がする・給水が止まらない
原因 |
対処法 |
浮き玉を持ち上げても水が止まらない場合 |
ボールタップの故障 |
ボールタップを交換する |
浮き玉を持ち上げると水が止まる場合 |
水位調節機能不良 |
- 浮き玉の支持棒を曲げて水位調節する
- ボールタップの水位調節リングを回して水位調節する
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浮き玉の破損 |
浮き玉を交換する |
浮き玉とボールタップをつなぐ支持棒の破損 |
支持棒を交換する |
タンク内で給水が止まらない原因は、ボールタップの故障や水位の調節機能に問題があると考えられます。浮き玉を持ち上げても水が止まらない場合は、給水の操作をしているボールタップが正常に動いていないため、ボールタップの交換が必要です。浮き玉を持ち上げて水が止まる場合は、浮き玉が破損やボールタップにつながる支持棒が折れていることが考えられます。水位調節が機能していない場合は、ボールタップの水位調節リングや支持棒を操作して水位を調節しましょう。
不具合3 水が流れない・手洗い管の水が止まらない
原因 |
対処法 |
レバーとフロートバルブをつなぐ軸が折れている・鎖が切れている |
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フロートバルブがずれている |
正しい位置にはめ直す |
ボールタップのフィルターがつまっている |
ボールタップのフィルターを掃除する |
ダイヤフラムの劣化 |
ダイヤフラムを交換する |
レバーを回しても引っかかりもなく空回りして水が流れない場合は、レバーのハンドルとフロートバルブをつなぐ軸部分が折れているか、鎖が切れてフロートバルブが開かず排水されていないと考えられます。また、ボールタップのフィルターにゴミなどがつまって給水できないという可能性もあります。手洗い管の水が止まらない場合は、ボールタップのダイヤフラムが劣化していることがあるため、新しいものに交換しましょう。
不具合4 レバーが元に戻らない
回したレバーが元に戻らない場合は、レバー本体のサビなどによる回転不良や劣化の可能性があります。サビがひどい場合は、分解してサビを取り除きましょう。
トイレタンクの不具合を自分で修理する手順

トイレタンクの不具合を自分で修理する手順について解説します。
すべての作業前にしておくこと
- 止水栓を右回りに回して閉める
- タンクの蓋を外す
- タンク内の水位や浮き玉の位置を確認しておく
- レバーを回してタンク内の水を抜く
電源プラグをつないでいる場合は、作業前に必ず抜いておき、濡れた手でプラグを触らないようにし
ボールタップの交換
準備するもの
手順
- 止水栓とタンクの間の2つのナットをゆるめ給水管とボールタップを外す
- 新しいボールタップを取り付ける
- 給水管との間にあるナットをはめて固定する
- タンクの蓋を戻す
- 止水栓を左回りに回して開ける
- 水を流し動作を確認する
ボールタップは細かい金属部品が集まっていて複雑なため、自分で修理するのに不安がある場合は、専門業者に依頼するのが安心です。
フロートバルブと鎖の交換
準備するもの
手順
- レバーとフロートバルブをつないでいる鎖を外す
- オーバーフロー管の根元からフロートバルブを外す
- 新しいフロートバルブをオーバーフロート管の根元に取り付ける
- 鎖をレバーに取り付ける
- レバーを回し、フロートバルブが動くか確認する
- タンクの蓋を戻す
- 止水栓を左回りに回して開ける
- 水を流し動作を確認する
新しい鎖を取り付ける際は、古い鎖の長さを確認して同じ長さに調節し取り付けましょう。
水位の調節
水位の調節方法は、リングを回す方法と浮き玉の支持棒を曲げる方法の2つがあります。
水位調節リングがある場合
ボールタップに水位調節リングが付いている場合は、リングを左右に回して調節します。
- オーバーフロー管の水位基準線(WL)のメモリを確認する
- WLのメモリを基準に水位調節リングを回す
- 水位を上げたいとき:右方向に回す
- 水位を下げたいとき:左方向に回す
リングを90°回転させると約1cm水位が上下します。
水位調節リングがない場合
必要なもの
手順
- オーバーフロー管の水位基準線(WL)のメモリを確認する
- ペンチでナットをゆるめて浮き玉を引き抜く
- 浮き玉の支持棒を曲げて水位を調節する
- 水位を上げたいとき:支持棒の中央を上に曲げる
- 水位を下げたいとき:支持棒の中央を下に曲げる
- 浮き玉を元の位置に戻す
- ナットを固定する
- タンクの蓋を戻す
- 止水栓を左回りに回して開ける
- 水を流し水位を確認する
レバーの交換
レバーの交換方法について説明します。
必要なもの
手順
- レバーからフロートバルブの鎖を取り外す
- レバーを固定しているナットやパッキンをレンチで取り外す
- レバーを引き抜く
- 新しいレバーをタンクに差し込む
- フロートバルブの鎖をレバーに取り付ける
- タンクの蓋を戻す
- 止水栓を左回りに回して開ける
- 水を流し動作を確認する
ダイヤフラムの交換
ボールタップの一部であるダイヤフラムの交換方法です。
必要なもの
手順
- ボールタップから浮き玉を取り外す
- ボールタップのナットを外し、ダイヤフラムを持ち上げて外す
- 新しいダイヤフラムを取り付ける
- ナットを固定し浮き玉を戻す
- タンクの蓋を戻す
- 止水栓を左回りに回して開ける
- 水を流し動作を確認する
トイレタンクの修理を業者に依頼すべきケース

トイレタンクの不具合は、自分で修理できるものもありますが、次のようなケースでは業者に依頼するのが良いでしょう。
- オーバーフロー管を交換する場合
- 陶器がヒビ割れ・破損している場合
- タンクレストイレ・温水洗浄便座の不具合
- 原因不明や自分で修理するのに不安がある場合
オーバーフロー管を交換する場合
オーバーフロー管は、同じ型が製造終了していて新しいものが入手できないケースがあります。ビニールパイプで代用する方法もありますが、長さ調節などが難しくなるため、業者に依頼するのがおすすめです。
陶器がヒビ割れ・破損している場合
陶器にヒビが入っていたり破損したりしている場合は、応急処置を施したところで、根本的な解決には至りません。放置すると水漏れが起きる可能性もあるため、早めに業者に修理を依頼しましょう。
タンクレストイレ・温水洗浄便座の不具合
タンクレストイレは構造が複雑でメーカーによっても仕様が異なるため、自分で修理するには難易度が高くなります。また、温水洗浄便座は電気系統の知識が必要になるため、安全確保のためにも修理は業者に任せるのが良いでしょう。
原因不明や自分で修理するのに不安がある場合
不具合の原因がわからない場合や、自分で修理するのが不安という場合は、損害が大きくなったり時間がかかってしまったりする心配もあるため、無理せず業者に相談しましょう。
トイレタンクの修理料金の相場

自分で修理する場合と業者に修理を依頼する場合の料金の相場について、それぞれ解説します。
自分で部品交換する場合の費用
自分で修理する場合にかかる費用は、新しい部品購入代のみです。ただし、必要な工具が手元にない場合は新たに購入する必要があります。
一般的な部品価格の相場は、次の通りです。
- ボールタップ3,500円程度
- 浮き玉700円程度
- フロートバルブ800円程度
必要な工具は、ドライバー・レンチ・ペンチで、数千円程度で購入できます。
業者に依頼する場合の費用
トイレタンクの修理を業者に依頼した場合にかかる費用の相場は、8,000〜10,000円ほどです。業者によっては、別途出張料や見積もり料などが必要になる場合もあるため、追加料金の有無は、事前に確認しましょう。
トイレタンクに不具合があった時の注意点

トイレタンクに不具合を発見したとき、注意したいのは次の点です。
- 不具合を放置しない
- 部品はトイレの型番などを確認して正確なものを購入する
不具合を放置しない
不具合があっても使用に支障がないことを理由にそのまま放置しておくと、後々水漏れなどが拡大する可能性があります。修理費用が高くなる恐れもあります。不具合を発見したら、放置せずできるだけ早く修理しましょう。
部品はトイレの型番などを確認して正確なものを購入する
部品の交換が必要になった場合は、トイレの型番を確認して現状取り付けられている部品と同じ物を購入します。ホームセンターで新しいものを購入する際、実際に現在使用している部品を持って行くとわかりやすいでしょう。
まとめ
トイレタンクの不具合には、水が止まらない、便器に水が流れ続けるなどの症状がありますが、主な原因はフロートバルブやボールタップ、浮き玉の不具合であることが多いです。
原因が特定でき作業が簡単な場合は、DIYで修理することも可能ですが、修理箇所によっては業者に依頼すべきケースもあるため注意が必要です。また、原因がよくわからない場合や、作業に少しでも不安がある場合には、放置せず早めに業者に依頼しましょう。
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