屋根は住宅の最上部にあり、紫外線や風雨を受けて傷みやすい場所です。屋根のリフォームを放置すると、劣化が進み大がかりな修繕が必要になる場合もあります。屋根材や塗料によって耐用年数が異なり、リフォーム方法も、塗装・重ねぶき・ふき替えと種類があるため、適切なタイミングでリフォーム方法を選択する必要があります。今回は、屋根のリフォームに関する種類や費用、安く抑えるポイントについて解説します。

屋根リフォームの工法と費用目安

紫外線や風雨を直に受ける環境で傷みやすい屋根は、水漏れやカビ・腐食などのリスクがあるため、定期的なリフォームが求められます。屋根をリフォームする方法は、次の3種類があります。
屋根リフォームの工法 |
内容 |
費用相場 |
塗装(塗り替え) |
屋根材に塗料を塗布する |
15~80万円 |
重ねぶき(カバー工法) |
既存の屋根の上に新しい屋根材を重ねる |
60~250万円 |
ふき替え |
下地を含め屋根材全面を一新する |
70~260万円 |
実際にかかる費用は、リフォームする屋根の面積や使用する材料や工事方法によって異なるため、見積もりを出す必要があります。使用している屋根材や経過年数、劣化状況によって必要なリフォーム方法が異なるため、それぞれの屋根リフォームの特徴や費用について確認しておきましょう。

塗装(塗り替え)リフォーム
屋根の塗装(塗り替え)リフォームは、屋根材を保護して防水性・耐久性を高め、屋根を美しく保つのが目的です。屋根材に塗装が必要なのは、主にセメント瓦・スレート系・金属系の屋根で、粘土瓦には必要ありません。塗装は、下地部分があまり劣化していない場合に有効なリフォームであるため、下地に劣化がみられる場合は、補修が必要です。塗装リフォームは、次のような流れで行われます。
- 高圧洗浄で汚れを落とす
- 傷んでいる部分を補修する
- 塗料を複数回塗っていく
塗装前に、屋根材にひび割れや腐食、雨漏りなどがないか確認してもらいましょう。塗装リフォームにかかる日数は、7~10日程度です。
屋根塗装リフォーム費用の内訳
屋根塗装リフォームにかかる費用の相場は、15〜80万円ほどですが、使用する塗料の種類や屋根の形状、施工面積によって費用が変わってきます。まず、屋根塗装の費用にはどのようなものが含まれているのか、内訳を見てみましょう
内容 |
1㎡にかかる費用 |
塗料の施工 |
1,200〜5,500円 |
養生・メッシュシート |
100〜400円 |
高圧洗浄 |
150〜300円 |
ケレン(下地処理)※ |
400〜600円 |
タスペーサー・縁切り作業※ |
360〜800円 |
足場※ |
600~900円 |
事管理費・諸経費 |
工事費の約3~10%ほど |
※必要な場合のみ
ケレン:表面をやすりで擦り、汚れ・サビ・塗膜などを落として塗料の付着性を高める下地処理
縁切り:雨漏りや結露を防ぐために屋根と屋根の間に隙間を確保する作業で、タスペーサーという板状の道具を使用する
塗料の種類によって費用は異なります。主な塗料の費用は、次の通りです。
塗料の種類 |
特徴 |
1㎡にかかる費用 |
ウレタン |
光沢のある仕上がり |
1,200~2,200円 |
シリコン |
最もポピュラーで多く使用されている |
1,600~3,500円 |
ラジカル |
チョーキング現象を抑える |
1,800~4,500円 |
フッ素 |
耐久性が高い最高級塗料 |
1,800~4,800円 |
セラミック |
遮熱・断熱効果がある |
2,300~4,500円 |
無機 |
紫外線による劣化が少ない |
4,000~5,500円 |
よく使用されるのはウレタンとシリコンです。塗料の価格が高いほど、耐久性も高くなります。

重ねぶき(カバー工法)リフォーム
重ねぶき(カバー工法)は、既存の屋根の上から新しい屋根材を重ねるリフォームです。重ねぶきが可能なのは、スレート・コロニアル・ガルバリウム鋼板・トタンの屋根です。屋根に痛みが見られるものの、下地までは劣化していない場合に有効な工法です。反対に、下地に劣化がみられる場合は、重ねぶきはできないため注意しましょう。
後述するふき替えリフォームと比べると、屋根の解体や廃材の処理といった工程がほとんどなく、工事における費用や工数を少なく抑えられるというメリットがあります。屋根が2重になり遮音性や断熱性がアップする一方で、重さが増すため耐震強度に気を配る必要があります。重ねる屋根材には、金属系などできるだけ軽量のものを選びましょう。重ねぶきリフォームは、次のような流れで行います。
- 既存屋根の上にルーフィング(防水シート)を張り付ける
- ルーフィング(防水シート)の上に新しい屋根材を張り付ける
- すき間をコーキングで埋める
- 付帯部分を施工する
重ねぶきリフォームにかかる日数は、5日程度です。
重ねぶきリフォーム費用の内訳
重ねぶきリフォームにかかる費用の相場は、60〜250万円ほどです。費用の内訳は、次の通りです。
内容 |
1㎡にかかる費用 |
新しい屋根材の施工 |
5,000〜11,000円 |
ルーフィング(防水シート) |
500~1,500円 |
棟板金・軒・ケラバなど |
3,000~11,000円 |
下地材(野地板・コンパネなど)※ |
1,500~2,500円 |
足場※ |
600~1,000円 |
工事管理費・諸経費 |
工事費の約5~10% |
※必要な場合のみ
ケラバ:屋根の一部で、切妻屋根や片流れ妻側の屋根の端

ふき替えリフォーム
ふき替えリフォームは、既存の屋根材や下地を解体・撤去し、全面を一新する工法です。屋根そのものをまったく新しいものへリフォームするため、耐震性能を上げたり、換気扇・天窓を新たに取り付けたりすることも可能です。
しかし、塗装や重ねぶきと比べて屋根の解体・撤去を行うことから、費用は高額になりがちです。リフォーム完了までの工期も長くなるため、近隣に工事音やホコリなどが広がることで近所トラブルにならないよう、十分配慮する必要があります。
ふき替えリフォームは、費用が高額で工期もかかる大がかりなリフォームであることから、屋根リフォームの最終的な手段となります。できるだけふき替えリフォームに至る前に定期的なメンテナンスをしておくのが理想的です。ふき替えリフォームの大まかな流れは、次の通りです。
- 既存の屋根材を撤去する
- 下地のゆがみなどを修正する
- 野地板(下地材)を張り付ける
- ルーフィング(防水シート)を張り付ける
- 新しい屋根材を設置する
ふき替えリフォームにかかる日数は、2週間程度です。ふき替えの施工は、できる限り雨の少ない11月〜1月、3月〜5月に行うのが良いでしょう。
ふき替えリフォーム費用の内訳
ふき替えリフォームにかかる費用の相場は、70〜260万円ほどです。費用の内訳は、次の通りです。
内容 |
1㎡にかかる費用 |
新屋根材の施工 |
スレート |
5,000〜7,000円 |
ガルバリウム鋼板 |
6,500〜8,000円 |
粘土瓦 |
8,000〜15,000円 |
既存屋根材の撤去 |
1,500~3,000円 |
ルーフィング(防水シート) |
500~1,500円 |
下地の補修 |
2,000~3,500円 |
足場※ |
600~1,000円 |
アスベスト処理※ |
20,000~85,000円 |
工事管理費・諸経費 |
工事費の約5~10% |
※必要な場合のみ
建築した年代により、アスベストを含む屋根材を使用しているケースがあります。アスベストを含む屋根材を撤去する場合、アスベスト処理費用、飛散防止措置費用等がかかります。

屋根のリフォームを検討するタイミング
屋根のリフォームはどのタイミングで行うのが良いのか、屋根をリフォームする時期の目安について解説します。屋根の耐久性は使用する屋根材によって異なりますが、下地の防水シートや野地板などは20年前後で劣化すると考えられるため、次のようなタイミングが一般的です。
- 築20年以内:屋根の塗装
- 築20年以上:重ねぶき・ふき替え

屋根材別の塗装リフォームの目安時期
塗装リフォームをする目安の時期は、次の通りです。
屋根材 |
塗装リフォームの目安の時期 |
トタン |
7年~10年程度 |
ストレート |
8年~15年程度 |
セメント瓦 |
10年~20年程度 |
ガルバリウム鋼板 |
10年~25年程度 |
粘土瓦 |
原則不要(劣化がある場合は適宜) |
2回目以降の塗装は、使用する塗料の耐用年数によって異なりますが、8年〜15年程度経過した頃に行うのが良いでしょう。

屋根リフォームが必要な劣化状況とは

屋根のリフォームは、上述した時期を目安に検討するのがひとつの方法ですが、劣化が見られる場合はできるだけ早めに検討しましょう。屋根のリフォームを検討すべき劣化状況には、次のようなものがあります。
- サビ・変色
- 塗装の剥がれ
- チョーキング現象・色あせ
- カビ・コケ・藻
- 屋根材のひび割れ・破損
サビ・変色
サビは、美観を損なうだけでなく放置すると腐食の進行を早めることになります。また、時間が経過するとサビが落ちにくくなるため、早めに除去し予防することが大切です。ところどころサビがある場合は、塗装で修復することが可能です。塗装で補修できない場合は、ふき替えや重ねぶきでのリフォームが必要になります
塗装の剥がれ
紫外線や雨による経年劣化で、塗装した部分の塗料が剥がれやすくなります。塗料が剥がれ、屋根材が露出した状態で放置すると、防水性や耐久性が低下し雨漏りなどを引き起こす可能性があります。早い段階で塗装リフォームを検討しましょう。塗装の必要がない粘土瓦などは、塗装の剥がれは発生しません。
チョーキング現象・色あせ
触れたときに粉上の塗料が指に付くことをチョーキング現象(白亜化現象)といいます。紫外線や雨による経年劣化で起こります。塗料が劣化し塗膜の寿命が近いことをあらわすため、塗装リフォームが必要です。ひび割れや雨漏りなどの原因になります。
カビ・コケ・藻
カビやコケ、藻は、築年数が経過すると日の当たる場所でも発生します。特にスレート屋根などは発生しやすい傾向にあります。主な原因は、防水性の低下です。防水性が低下すると、屋根材の劣化を早めることにつながるため、塗装によるメンテナンスで防水性を回復させる必要があります。重ねぶきやふき替えで、カビ・コケ・藻が発生しにくい屋根材に変更するという方法もあります。
屋根材のひび割れ・破損
台風などで飛来した物の衝撃が原因の場合は、部分的な補修や交換をしましょう。経年劣化によるひび割れの場合は、該当箇所を補修した後に塗装し、防水性を回復させる必要があります。ひび割れが広範囲にわたる場合は、屋根材の部分的な補修や塗装をしても、再びひび割れが起きる可能性が高いため、重ねぶきやふき替えを検討するのが良いでしょう。
どの工法がいいか判断できないときは、専門業者の現地調査を経て、リフォームプランの提案をしてもらうのがおすすめです。

屋根のリフォームは外壁とセットにすると安くなる

屋根のリフォームは、外壁のリフォームをセットで施工すると足場を組む作業を一度にまとめられることで、費用を安く抑えられます。いずれは外壁のリフォームも必要になるため、タイミングが合えば一石二鳥です。トータルでかかるリフォーム費用を安くしたい場合は、外壁のリフォームもあわせて検討するのがおすすめです。
補助金や火災保険を利用できるケースも
屋根のリフォームで、補助金や火災保険による補償を受けられるケースがあります。断熱・遮熱などの省エネや、耐震性能アップを目的としたリフォームであれば、自治体の補助金制度を利用できる場合があり、リフォーム費用を安く抑えられます。お住まいの地域で補助金が利用できるか、以下のサイトで確認できます。
地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト(令和4年度版)
また、台風で被害を受けて屋根のリフォームをする場合、火災保険の風災補償を受けられる場合があります。保険金の支払いは、3年以内に請求することや損害額が20万円以上に限るなど、制限もあるため事前に確認しましょう。

まとめ
今回は屋根をリフォームする際の塗装・重ねぶき・ふき替えなどの種類や費用相場について解説しました。屋根材や下地の劣化具合を見ながら、適切なリフォーム方法で施工することが大切です。いずれの工事を実施するにしても足場の設置は必須となるので、屋根・外壁のリフォームは合わせて検討する事をお勧め致します。又、実施の可否は自己判断では難しいため、リフォーム業者の見積もりを取って具体的な検討を進めるのがおすすめです。補助金や保険金の利用も考えながら、屋根のリフォームをしましょう。

※当ページのコンテンツや情報において、カインズリフォームでは、取り扱いが異なる場合がございます。