障子は日本の伝統的で長い歴史がある和の建具です。そこに使用される障子紙の種類にはさまざまなものがあります。そのため、新築やリフォームなどの際にどれを選べばよいのか迷ってしまう方も多くいます。この記事では、障子紙の種類や特徴、メリットやデメリット、障子紙の選び方のポイントについて解説します。さらに、DIYでもできる障子紙の張り替え方、長持ちさせるコツなども詳しく解説していきます。
障子紙の種類と特徴

障子紙には、手すき和紙、機械すき和紙、プラスチック和紙などさまざまな種類があります。それぞれの特徴についてご紹介します。
手すき和紙
手すき和紙は「楮(こうぞ)」という植物の繊維を職人が一枚一枚手作業ですいてつくります。そのため、量産には向いていません。また、高品質な原料を使用しているため、その風合いは手すきならではといえます。調湿効果やフィルター効果があり、楮を含む割合で性能が異なってきます。
楮含有率40%以上の手すき楮障子紙
楮を40%以上含んでいるため、手すきの障子紙のなかでも特に高品質です。
楮含有率20~40%未満の障子紙
植物繊維であるパルプなどを含みます。楮の含有率40%以上のものと比べて強度はやや低いです。
機械すき和紙
機械すき和紙は、手すき和紙と比べて量産できるため安価です。楮以外の原料の多くは、パルプやマニラ麻などの植物繊維が使用されています。機械すき和紙は「パルプ障子紙」「レーヨン障子紙」の2種類です。それぞれの特徴について解説します。
パルプ障子紙
最も安価に流通しているため手軽に手に入ります。80%以上パルプを使用しており、繊維が短く強度も低いです。しかし、1年ほどで破れやすい状態になります。また、紫外線により劣化していくため、毎年張り替えが必要です。
レーヨン障子紙
植物繊維のパルプを主な原料に、レーヨンが40%以上配合されています。レーヨンは木材由来である繊維のため、楮の光沢や強度に似た性質があります。楮より安価であるレーヨンは、機械すき和紙の原料として使用されることが多いです。
プラスチック障子紙
塩化ビニールの2枚のシートで和紙を挟み、コーティングして強度を上げた障子紙です。汚れても拭き取れるため、お手入れが簡単です。紫外線の影響を受けにくく、破れにくい構造になっています。見た目は和紙の風合いがあります。また、従来の障子同様に「障子のり」や「アイロン」「両面テープ」で張ることが可能です。
パルプ障子紙とプラスチック障子紙のメリット・デメリット
さまざまな種類がある障子紙のなかで、最も多く使用されているパルプ障子紙と、近年注目されているプラスチック障子紙のメリット・デメリットについてそれぞれ解説します。
パルプ障子紙
パルプ障子紙のメリット・デメリットについて解説します。
メリット
・室内の温度の調節が可能
通気性や吸湿性があるため、室内の急激な温度変化を抑えることができます。
・価格が低め
障子紙の中でも、値段が手頃のため、最も取り入れやすい障子紙です。
デメリット
・頻繁に張り替えが必要
紫外線に弱く、日焼けにより黄ばんでしまいます。また、強度がないため、子どもが遊んでいるときや、ペットのひっかきなどで破れやすいです。そのため、頻繁に張り替える必要があります。
・耐久性が劣っている
パルプ障子紙の一番のデメリットが耐久性に劣る点です。強度がないため破れやすく、汚れやすいです。
プラスチック障子紙
プラスチック障子紙のメリット・デメリットについて解説します。
メリット
・耐久性に優れている
他の障子紙と比べて耐久性に優れています。紫外線の影響を受けにくく破れにくいため、障子紙を張り替える頻度も少なくて済みます。汚れても水拭きで拭き取ることが可能です。
・冷暖房の効果がアップする
使用している材質の性質上、気密性が高いです。そのため、冷暖房の効果が高く光熱費の節約にもつながります。
デメリット
・通気性がなくなる
使用されている材質の性質上、通気性がなくなります。
・価格が高めである
機能性をあわせ持つため、プラスチック障子は他の障子紙に比べて価格が高めです。
障子紙の選び方のポイント

破れにくさで選ぶ
小さい子どもやペットがいる家庭は、破れにくい障子を選びましょう。思いがけず破れてしまう機会が多いと予想される場合には、プラスチック障子紙がおすすめです。
通気性の高さで選ぶ
立地環境によっては、窓と同様に障子に結露が発生する場合があります。その場合は、通気性の高い障子を選ぶとよいです。逆にプラスチック障子は通気性が悪いため不向きです。
断熱性の高さで選ぶ
冷暖房の効率を上げたい場合には、断熱性の高いプラスチック障子がおすすめです。冷暖房効果が上がるため、光熱の節約にもつながります。その反面結露が発生しやすく、室内と室外の温度差が激しい時期にカビが発生しやすくなるため注意が必要です。
遮光・紫外線カットで選ぶ
障子は光や紫外線を通すため、日焼けにより畳や部屋に置いた家具などが変色してしまいます。遮光・紫外線カットの機能付きを選べば、紫外線から守られるため安心です。
部屋の明るさで選ぶ
部屋をどの程度明るくしたいのかをポイントに、障子紙の素材で選ぶとよいです。障子紙の原料や、加工法によって部屋の明るさが変化するためです。落ち着いた部屋の雰囲気にしたい場合には、透過性や反射率の低い手すきの障子紙がおすすめです。また、化学繊維が原料の障子紙は白色が鮮やかで光を反射しやすいため、できるだけ部屋を明るくしたい場合におすすめします。
張り替え作業が簡単なものを選ぶ
自分で障子紙を張り替える場合には、貼る作業や剥がす作業が簡単にできるものを選びましょう。アイロン貼りが可能な障子紙は、手間がかからずおすすめです。
障子紙を張り替えるタイミング

5年に一度は張り替える
障子が破れたり、穴が開いたりしていなくても、5年に一度の張り替えがおすすめです。湿気や紫外線の影響を受けやすい障子は、5年ほど経過すると劣化が始まるためです。衛生面をよい状態に保つためにも、定期的に張り替えることが大切です。特に、パルプ障子紙は紫外線に弱い性質があります。使用頻度が多い場所では5年以内でも張り替えが必要になる場合もあります。
湿度の高い日がおすすめ
梅雨の時期や雨の日など、湿度の高い日に張替え作業を行うことをおすすめします。障子紙の性質上、水分を含むと張りが出るためです。また、障子紙の貼る位置の微調整がしやすく、乾いた後には紙がピンと張り、仕上がりが美しくなります。逆に乾燥しやすい時期は紙が破れやすくなるため、避けたほうが良いです。
DIYで障子紙を張り替える
障子紙の張り替え方法を紹介します。のり貼り障子紙を例に、以下の手順で準備段階から解説していきます。
張り替え場所を確保する
張り替えには広めの作業場所が必要です。安定した場所に障子を寝かせて行なう必要があるためです。新聞紙やビニールを敷いて汚れを防ぐ準備も忘れないようにしましょう。
障子紙剥がしを使って古い障子紙を剥がす
障子を裏返し、障子紙剥がし剤を障子紙が貼られている桟に塗ります。数分ほどおいて、剥がし剤が古い障子紙に十分含んだ状態で、角からゆっくりと剥がしていきます。
障子枠の桟に残った古い障子紙をきれいに取り除く
水で濡らしたタオルを使って、桟に残った障子紙や古いのり・剥がし剤の汚れなどをきれいに拭き取ります。拭き取りきれない箇所は、使い古しの歯ブラシなどを使って取り除きます。乾かす際は日陰に置いて水分を残さないように十分に乾燥させましょう。
障子紙をカットする
巻き物のようになっている障子紙を、枠に沿わせて置きます。粘着力が弱めのテープで仮留めし、枠より10㎝ほど大きめにカットします。
障子枠の桟に障子用のりをつける
水に溶かして使用するタイプののりの場合は、全体にムラなくつくようにします。専用の容器に入っているのりの場合は、押し出し過ぎないように注意しましょう。
障子紙を貼る
仮留めしておいた障子紙を転がしながら貼りつけていきます。その際、桟の上を軽く手で抑え、しわ・たるみをつくらないように注意します。
余分な障子紙はカットする
カッターを使って、余分な障子紙はカットしていきます。のりが十分に乾いていない状態でカットしていくため、カッターの刃はこまめに交換することが、きれいに仕上げるコツです。
乾かす
障子紙を張り終えたら、霧吹きで全体に水をかけてから乾かします。水分を一度含ませておくことで、障子紙のたるみ防止が可能です。そのあと、日陰で半日ほど乾かして作業完了です。
障子紙を長持ちさせるためのポイント

障子を長持ちさせるためのポイントについて解説します。
破れた箇所のみ張り替える
少しだけ破れた場合、部分的に補修してそれ以上破れないようにしておきます。あえて異なる素材の布や、模様の付いた紙を張るとアクセントになり、おしゃれの演出が可能です。
ホコリは定期的に取り除く
障子の桟はホコリが溜まりやすい箇所です。ホコリをそのままにしておくと、汚れの原因につながります。溜まってから取り除くのではなく、定期的にホコリをとることが大切です。隅の方に溜まった細かいホコリが取りにくい場合がありますが、綿棒などを使用してこすると取り除くことができます。
黄ばみや汚れを取り除く
草木が原料の和紙はリグニンという成分が含まれています。長時間酸素や日に触れると黄ばんでしまう場合があります。使用している障子紙がリグニンを多く含んでいる場合には、黄ばみ対策は必要不可欠です。コップ1杯分の水に洗濯のり小さじ1、キッチン用漂白剤小さじ2を混ぜ合わせ、霧吹きで黄ばんだ部分に吹きかけます。同じ箇所に何度も吹きかけると破れる場合があるため注意しましょう。また、障子の桟には劣化や変色することもあります。取り扱いには十分な注意が必要です。
小まめに閉める
きれいな状態を保つためには、障子は小まめに閉めておくことが大切です。障子を開けたままの状態では、重なった2枚の障子の間に湿気が溜まり、カビが発生しやすくなるためです。必要でない場合には、閉めた状態にしておきましょう。
引き手回りを清潔にしておく
手垢や汚れが付着しやすい引き手回りは、定期的に掃除してきれいにしておくことが大切です。指先の皮脂汚れはそのままにしておくと取りづらくなり、障子の劣化を早める原因にもつながるためです。
まとめ
障子紙にはさまざまな種類や特徴があり、優れた機能を備えています。障子を張り替える際には、選び方のポイントを参考にご自身の理想を叶えられる障子紙を選んでください。障子紙を張り替えるだけで部屋の雰囲気はガラッと変えられます。最近ではおしゃれなデザインの障子紙もあります。ぜひ、お気に入りの障子紙を見つけてください。
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