環境にやさしくエネルギーコストにも優れた電気自動車ですが、ガソリンのように短時間でエネルギー補給できない点がデメリットの1つです。電気自動車を利用する上で、充電にかかる時間はとても気になるところではないでしょうか。満充電までにどれくらいの時間がかかるのか、さらには充電時間を短縮する方法や必要な準備などについて、詳しく解説していきます。
電気自動車の充電時間と走れる距離

電気自動車を充電する方法は1つだけではありません。使い方に応じて、普通充電と急速充電を使い分けてバッテリーを運用していくのが賢い方法です。
普通充電と急速充電の違い
電気自動車の充電には、普通充電と急速充電の2つの充電方法があります。普通充電とは、200Vの交流電源を使い、ゆっくりと時間をかけながら充電する方法。3~6kWの出力です。それに対して急速充電は、直流の電源から20~50kWもの高出力で、短時間で充電する方法です。
電気自動車の普通充電とは
普通充電についてさらに詳しく解説すると、使用する交流電源は一般的な家庭と同じですが、200Vの電圧を使用する点が、家電製品などとの違いです。出力は3~6kW程度ですから、一般的な40kWhの電気自動車への充電時間は、6~12時間になります(残量10%からの充電の場合)。
<充電時間の目安>※容量40kWhバッテリーの残量10%からの充電
・3kWの場合/36kWh(バッテリー容量)÷3kWh(1時間の充電量)=12時間
・6kWの場合/36kWh(バッテリー容量)÷6kWh(1時間の充電量)=6時間
電気自動車の急速充電とは
普通充電が交流電源を利用することに対して、急速充電は直流電源を利用している点が最大の特徴です。20kW~50kWもの高出力で充電を行いますが、バッテリーへの負担が大きいことから、出力をセーブしながら充電するのが一般的です。急速充電は専用の充電スポットで利用できますが、1度の充電時間が「30分まで」と決められている上、急速充電だけで満充電することもできないようになっています。
必ずしも満充電でなくてもOK
高出力での充電はバッテリーへの負担が大きいように、満充電を繰り返す運用方法もバッテリーに大きな負荷がかかります。バッテリー保護の観点から考えても、80%~90%の充電量で使用するのがベストな運用方法であると言えます。長距離を連続で走行するような特殊な使用環境を除けば、日常的には満充電しない状態で利用するのがよい方法です。
電気自動車の充電時間の計算方法

普通充電と急速充電では、電気の出力が大きく異なるため、充電に必要な時間も変わります。電気自動車の充電時間の計算方法を解説していきます。
簡単に分かる充電時間の計算方法
電気自動車を充電する時間は、以下の計算方法で簡単に算出できます。
<充電にかかる時間の計算>
・充電器の出力(kW)×充電時間(h)=充電量(kWh)
出力(kW)は、使用する充電設備によって異なります。普通充電であれば3~6kW、急速充電ができる設備であれば20~50kWです。これに充電する時間(h)をかければ、充電量(kWh)が分かります。
普通充電の充電器の出力は3kWまたは6kW
家庭でも使用する交流電源を用いた普通充電の場合、3kW出力であれば1時間の充電量は3kWh、6kWなら6kWhです。
<普通充電の1時間の充電量>
・3kW出力の場合/3kW(充電器の出力)×1時間(充電時間)=3kWh(充電量)
・6kW出力の場合/6kW(充電器の出力)×1時間(充電時間)=6kWh(充電量)
急速充電の出力は20~50kW
現在の日本に設置されている急速充電器は、20~50kW程度の出力に設定されています(チャデモ規格)。単純計算で、1時間あたりの充電量は20~50kWhとなり、40kWhクラスの電気自動車であれば、1時間以内での満充電も計算上では可能です。ですが、高出力での充電は発熱量が増え、バッテリーへの負担が非常に大きいことから、出力を抑えると同時に、1度の充電時間が30分までとされています。
電気自動車の充電時間に影響する要素
急速充電では、最大出力ではなくバッテリーを保護するために出力を抑えて充電が行われるように、充電機器と電気自動車が相互に通信をしながら充電されるようシステム仕様が決まっているため、車種やバッテリー仕様によって、充電時間が異なります。
車種によって対応可能な充電出力が決まっている
充電システムと車両が通信でつながり、情報をやり取りしながら電力を受け取っているため、出力の大きな充電器につないでも、決められた最大値以上の電力は受け付けることができません。受入最大電力が30kWhの車種では、出力50kWhの急速充電を使っても、最大値以上では充電できない仕様です。また、電気自動車に搭載されているリチウムイオン電池は、性能を保護するために、満充電に近づくと急速充電からの電力の受け入れをセーブする特性があり、数値通りの充電が常にできるわけではありません。
日本の規格では最大50kWでしか充電できない
現在の日本では、充電器の出力がどれほど高くても、急速充電の最大値は50kWまでとされています。テスラ社のスーパーチャージャーであっても、専用のアダプターを使用して50kW以下で充電する仕様になっています。
電気自動車はフル充電にすべき?

電気自動車のバッテリーは、常に満充電を保つ必要はありません。使用する環境に応じて、30~80%充電で運用するのが理想です。その理由は、リチウムイオン電池の特性によります。
フル充電はバッテリーの劣化を早める
リチウムイオン電池は、電極などの電池内部の素材の化学変化によって電気を蓄える仕組みですが、充電と放電を繰り返すうちに、変質・劣化していく性質があります。蓄積できる電気の量がどんどん減っていき、実用上の不便を感じるようになれば、やがて寿命がやってきます。特に、フル充電で長時間放置すると性能が劣化しやすいため、日常的には80%程度での充電を繰り返すことで、バッテリー寿命を伸ばすことができます。
バッテリーが劣化するとどうなる?
充放電を繰り返して蓄積できる容量が減ってしまうと、電気自動車の航続可能距離も短くなってしまいます。 40kWhのEVで、航続可能距離が最大240km(40kW)だったものが、80%(32kW)への劣化で192kmになります。新品時に比べて70%以下までしか満充電できなくなると、バッテリーの交換を検討する必要が出てきます。
どの程度の充電量がバッテリーによいのか
バッテリーへの負荷が最も大きくなるのは、フル充電と空を繰り返すことです。そのため、満充電を避けて、30~80%充電で運用するのが最も好ましいと言えます。40kWhの電気自動車の場合であれば、50%充電でも120kmの走行ができるため、日常での使用には十分な容量です。
バッテリーにやさしい充電のコツ
日常では30~80%まで充電し、フル充電は遠出の前日に限定するのがバッテリーにやさしい充電のコツです。急速充電は劣化を早める原因となるため普通充電をメインの充電方法として、急速充電は外出先で必要な分だけに留めるようにするのが理想です。
スピードを控えてバッテリーにやさしい運転
バッテリーは急激に電気を出力すると発熱する特性があり、高温がバッテリーの劣化を早める原因となります。運転中は穏やかなアクセルワークを心掛けて、バッテリー出力が高くなる急発進は避けるようにしましょう。高速道路でもスピードを控えてアクセルの開閉をできるだけ少なくすることが、バッテリーに最も良い運転方法です。
外出時に充電の心配を減らすには
ガソリン車の給油とは違い、短時間では充電できない点が電気自動車のデメリットですが、公共の充電スポットを利用すれば、外出時の充電でも不安を感じることはありません。
出先では必要な分だけ充電する
遠方に外出する際は、家でフル充電にしておき、外出先では使う分だけ急速充電で継ぎ足せば、コストを抑えつつロングドライブを楽しめます。移動の途中で充電する場合は急速充電が便利ですが、ホテルやショッピングモールなど滞在時間が長い目的地で充電する場合は、普通充電を利用するのがおすすめです。充電コストを抑えられる上、バッテリーへの負担も少なくて済みます。
充電計画を立てておく
全国には2万基以上の充電スポットがあるので、あらかじめ充電計画を立てて外出するとよいでしょう。専用サイトやカーナビで簡単に検索できるので、充電スポット探しに苦労することもほとんどありません。
充電スポットが設置されている場所を知る
急速充電設備が多いのは、高速道路のサービスエリアやパーキング、幹線道路沿いの道の駅やカーディーラー、商業施設などです。一方、宿泊施設やオフィスビルの駐車場などには、普通充電のスポットが多く、長時間滞在時にしっかりと充電することができます。
まとめ
ガソリン車の場合、1度の給油で満タンにしておく方が給油の頻度も少なくできて便利な上、コストも変わりません。一方、電気自動車を充電する場合は、家充電と外充電ではコストが大きく違う他、普通充電と急速充電でも違いがあります。
賢く利用するポイントは、コストの低い家充電をベースとして、外充電では必要な量だけ充電することです。時間がない場合に限って外充電での急速充電を利用し、滞在時間が長い宿泊先や勤務先などでは普通充電を利用するのが良いでしょう。
低出力による普通充電は、バッテリーを保護する上で有効です。無理にフル充電しなくても、日常使いであればバッテリー容量の30~50%の充電量でも問題ありません。充電に関する正しい知識を身につけて、スマートな運用を意識してみてください。
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