旗竿地(はたざおち)とは、道路に接した細い通路を通った先に家の敷地がある土地のことです。竿がついた旗の形状に似ていることから、旗竿地と呼ばれています。
長方形や正方形に整った土地よりも安く購入できる魅力がある一方で、竿にあたる部分が隣家に接している場合が多く、使い方によっては苦情の原因になることがあります。特にカーポートを建てる際には注意が必要です。
この記事では、旗竿地に適したカーポートや苦情になる理由を詳しく解説します。旗竿地にお住まいの方はもちろん、マイホームのための土地探しをされている方、後から隣接地に家が建つ可能性がある方は、参考にしていただければと思います。

旗竿地とは
都市部などの住宅が密集しやすいエリアでは、特殊な形状の宅地が多く見られます。その中で、道路に接した細長い通路(最低2m)を通って広い宅地に出る“竿がついた旗のような形状をした土地”を「旗竿地」といいます。このような特殊な形状の宅地は、相続などで複数の所有者が共有していた土地を分割することで生まれる場合が多いようです。
通路の幅が最低2mというのは、分割された土地が道路から見て奥側に位置する場合に、横幅2m以上が道路に接していれば宅地として建物を建てられるため、竿の部分を道路まで延長している場合が大半なのです。こうした背景から、旗竿地は「敷延(敷地延長)の土地」とも呼ばれており、地価の高い都市部でよく見られます。
旗竿地は、道路から奥まった宅地に住宅を建てられるので、道路を通る人の視線も交通の騒音も気にならない静かな生活環境が手に入ります。長方形や正方形に整った整形地よりも、2~3割安く購入できる点も魅力的です。一方で、周囲が隣家に囲まれているため生活音に対する配慮が欠かせません。また、駐車スペースを確保するにはひと工夫が必要です。

旗竿地にカーポートの設置は可能?

カーポートの設置は可能です。ただし、通路の幅によってはカーポートを設置することが難しくなります。旗竿地の多くは、道路に面した通路部分が駐車スペースや玄関アプローチとして利用され、その奥に広がる旗の部分に建物が建てられます。通路の幅は最低2mとお伝えしましたが、ギリギリ2mの通路に駐車スペースとしてカーポートを設置すると、車の出し入れや乗り降りがしにくくなります。車の横を通って住宅に入るスペースをとることも難しいでしょう。
カーポートを設置する場合は、柱を建てるスペースはもちろん、車の横を人や自転車が通れるスペースを確保しなければなりません。これらを総合的に考えると、通路の理想の幅は3m以上となります。なお、車幅によって理想の幅は大きく変わりますので、車幅+1~1.5mを目安にカーポートを設置できるかどうかを調べることをおすすめします。
また、車庫勾配も考慮しましょう。車庫勾配とは、カーポートを設置するコンクリートなどの土間に少しだけ勾配をつけることです。車庫勾配がないとカーポートに水たまりができてしまい、車や足元が汚れてしまいます。車庫勾配は道路側に向かって2%の勾配をとることが一般的とされており、車1台分(6m)であれば12cm、車2台分(12m)であれば24cmの車庫勾配が必要です。車庫勾配がしっかりととれるかどうかは、土地を購入する前に必ず確認しましょう。

旗竿地に設置しやすいカーポートの種類と相場

旗竿地に設置しやすい3種類のカーポートと、本体価格の費用相場をご紹介します。
後方支持タイプのカーポート(費用相場30万円~50万円)
一般的なカーポートは左右どちらかに柱がついた構造ですが、後方支持タイプのカーポートは、後ろに柱があって屋根を支える構造になっています。左右に柱がないので車の出し入れや乗り降りがスムーズにできますし、解放的なので圧迫感がありません。隣家の塀に囲まれた狭い通路部分を無駄なく有効に使えます。
縦連棟タイプのカーポート(費用相場20万円~40万円)
縦に2台駐車できる長いカーポートです。1台用のカーポートの長さは5~6m程度ですから、縦連棟タイプであれば12m分の長さを屋根で覆うことができます。通路部分を長く屋根で覆うことができるため、雨にぬれずに玄関の近くまで移動できるメリットがあります。雪の多い地域であれば、雪かきの手間も軽減されるでしょう。
両支持タイプのカーポート(費用相場20万円~)
柱が4本ついたカーポートです。旗竿地は住宅が密集している場合が大半ですので、台風や大雪での倒壊によって隣家に被害が及ぶリスクがあります。それを防げる強度があるため、豪雪地域や風の強い地域でよく利用されています。
施工費用も確認が必要
3種類のカーポートの費用相場は、本体価格です。このほかカーポートの施工費用がかかります。施工費用の相場は、5万円~10万円です。カーポートの設置場所にコンクリートを打設する場合は、1台分のスペースで30万円ほどかかります。
業者選びによって費用が想像より高くなる場合もありますので、2~3社から見積もりをとることをおすすめします。また、予算がオーバーする場合は「予算に近づける提案をしてほしい」と業者に相談してみるとよいでしょう。予算を提示することで削れる部分がないかを検討してくれますので、予算通りにカーポートを設置できるかもしれません。

旗竿地にカーポートを設置する際の注意点

旗竿地にカーポートを設置すると、隣家から苦情が寄せられる場合があるので注意が必要です。ここでは苦情になる理由と対策をご説明します。
日当たりが悪くなる
旗竿地の通路部分は隣家と接しています。そのため、カーポートを設置すると隣家の日当たりが悪くなる可能性があります。日当たりの良さが気に入って土地を購入される方は多いため、思わぬところで急に日当たりが悪くなれば苦情になるのは当然でしょう。
苦情を防ぐ対策としては、採光性のあるクリアマット系の屋根材を使うほか、できるだけ広いスペースが確保できるカーポートを選択することをおすすめします。旗竿地をこれから購入する方や旗竿地の隣の土地を購入する方も、隣家のカーポートの有無や状態をしっかりと把握しておいたほうがよさそうです。
台風や大雪でカーポートが倒壊する
台風や大雪によるカーポートの倒壊被害は珍しいことではありません。住宅が密集する旗竿地では、カーポートが倒壊すると、隣家に被害が及ぶ可能性が高くなります。カーポートの屋根が隣家の窓や外壁に直撃すれば破損だけでなく、ケガをさせる恐れも出てきます。
対策としては、風や雪に対する耐久性が高い両支持タイプのカーポートを設置することがあげられます。2本の柱で支えるカーポートよりも倒壊の心配は少なくなります。また、カーポートの柱はスチール製のものが中心ですが、アルミ製のほうが耐久性に優れ、錆(さび)による劣化も少ないので安心です。また、耐荷重性能や耐風圧性能が、お住まいの気候に対応しているかを確認してから購入しましょう。
敷地に雨が流れ込み、雪が落下する
旗竿地は、隣家との境界線ギリギリにカーポートを設置することになります。雨や雪が多い土地では、カーポートの屋根をつたって隣家の敷地に雨水が流れ込んだり、屋根から雪が落下したりする場合があるので、苦情になることがあるようです。
また「雨がカーポートの屋根にあたる音がうるさい」と苦情を言われる場合もあるようです。屋根に傾斜をつけたり、屋根に防音シートを貼ったりすることで改善できる可能性もあります。効果の大きさついては一概には言えませんので、専門家に相談することをおすすめします。天候だから仕方がないと放置していては、隣家との関係が悪化するかもしれないため、注意が必要です。
エンジン音がうるさい
車が好きな人にとってエンジン音は心地の良い音かもしれませんが、隣家には想像以上に大きく響いて不快な音になってしまいます。
特にカーポートと隣家の寝室が近い場合は、深夜や早朝にエンジンをかけると就寝中の人を起こしてしまうでしょう。やっと寝かしつけた赤ちゃんまでエンジンの音で起きてしまい、再び寝かしつけるまでに時間がかかるという苦労もあるようです。また、目が覚めやすい高齢者の安眠も妨害している可能性があります。エンジン音だけでなく、必要以上の力でドアを閉める音も、カーステレオの重低音も、大きく響いて苦情になりやすいようです。
排ガスが窓から入る
カーポートと隣家の窓の距離が近ければ、風向きによっては排ガスが室内に入り込んでしまいます。排ガスで隣家のベランダや窓が黒く汚れてしまうことや、洗濯物を外に干せる状況ではなくなってしまうことも考えられるので注意が必要です。マフラーの向きが隣家と逆の方向に向くように駐車をするといった配慮を心掛けましょう。

まとめ
隣家とは長いお付き合いになるため、些細なことからトラブルになって関係を悪化させるといったことは避けたいものです。旗竿地のカーポート設置による苦情を回避するために、カーポートが採光を遮らないか、屋根をつたって敷地に雨が流れ込まないか、雪が落下しないかなどをチェックしながら、カーポートの設置を検討してみてください。

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