プロがカーポートの種類と選び方を解説
国内で販売されているカーポートの種類はとても豊富です。デザイン・素材・駐車台数・メーカーなどによって価格も異なるため、カーポートを購入する際には迷いがちです。また、カーポートは建ぺい率や設置地域も考慮して選ぶ必要があります。
カーポートの選びで失敗しないために「専門家のアドバイスが欲しい」という方も多いため、この記事ではホームセンター・カインズのカーポート担当者が、プロフェッショナルの視点から分かりやすくカーポートの種類と、その選び方を解説していきます。 ぜひ、カーポートを選ぶ際の参考にしてください。

カーポートとは?
ガレージとカーポートの違い
カーポート
まずはカーポートの定義を知っておきましょう。カーポートとは、屋根と柱で構成された簡易的な車庫のこと。ガレージと混同されがちですが、ガレージとは、屋根・壁・シャッターで構成された建物のことを言います。カーポートは「壁に囲われていない」車庫で、ガレージは「壁で囲われている」車庫と覚えるといいでしょう。
ガレージ
カーポートのほうがガレージよりも工事費が安く、設置工事がしやすいのがメリットです。また、壁がないため駐車しやすく、自動車の乗り降り、荷物の積み下ろしがスムーズにできる点もカーポートの魅力です。
カーポートを設置するメリット
カーポートを自宅のお庭に設置するメリットは、具体的には次の通りです。
- 車を乗り降りする人が雨に濡れにくい
- 紫外線から車体の色あせを防ぐ
- 鳥の糞や雨などによる汚れから車を守る
- 太陽の熱による車内の温度上昇を抑える
- 車に霜が降りるのを防ぐ
- 積雪から車を守る
- ガレージよりも工事費が安い
カーポートのデメリット
一方、カーポートのデメリットとしては、次の点が考えられます。
- 駐車スペースが十分にないと、車の乗り降りの際に柱が邪魔になる
- カーポートを建てることで圧迫感が出てしまう場合がある
- 積雪や台風・強風により、倒壊する可能性がある

カーポートの種類
それでは、カーポートの種類についてデザイン・素材・駐車台数・メーカー別に分類して、わかりやすく紹介していきましょう。
カーポートのデザイン
カーポートの基本的なデザインは、屋根を支持する仕方(柱の位置)によって、主に3種類に分けられます。
片側支持タイプ(片流れタイプ)
片側支持タイプのカーポート(LIXILフーゴR 1500 1台用)
柱が片側にあるタイプのカーポートです。駐車の際、柱が邪魔になりにくい特長があります。
両側支持タイプ
両側支持タイプのカーポート(YKKAAP エフルージュ2台用)
両側の柱で屋根を支えるタイプのカーポート。デザイン的にも性能的にも安定感があります。
後方支持タイプ
後方支持タイプのカーポート(YKKAP エフルージュ 2台用)
柱が後方にあるタイプのカーポート。柱が邪魔にならずに、車の出し入れ、乗り降りがしやすい。
その他の支持タイプ
そのほかにも下記のような珍しいタイプがあります。
- 吊り支持タイプ: 柱を両側に立てて屋根を吊るタイプのカーポート。
- 合掌支持タイプ: 真ん中の柱から両側に屋根を広げるタイプのカーポート。
また、屋根の支持タイプによる分類ではありませんが、車を縦に駐車するかたちのカーポートを「縦連棟タイプ」と呼ぶことがあります。
縦連棟タイプのカーポート(LIXIL ST3000タイプ)
デザインを選ぶポイント
カーポートを選ぶ際は、上記の構造タイプの中から、どれがご自宅の庭に設置しやすいかを検討しましょう。柱の位置を考えて、駐車や乗り降りのしやすいタイプを選ぶのがポイントです。
また、屋根のデザインには「平板(フラット)・折板・ラウンド・アール」など様々な形状があり、色もたくさんの中から選べます。機能性だけでなく、建物と庭に調和したデザイン、自分の好みに合った色を選ぶことも後悔しないカーポート選びのためには大切です。
カーポートの素材
カーポートは、屋根と柱で構成された単純な構造です。だからこそ、使用する素材によって機能性や見た目も大きく変わってきます。 カーポートに使用される主な素材は下記の通りです。特長を理解して選びましょう。
屋根の素材
- ポリカーボネート: プラスチックの中でも衝撃に強く、防火性能も備えています。温度変化による狂いも少なく、最もカーポートの屋根材に用いられることが多い素材です。 熱線遮断ポリカーボネートを使えば、真夏の太陽光線下でも社内温度の上昇を抑えることが可能で、カラーバリエーションも豊富。※カラーによって光の透過率(明るさ)が変動するので注意が必要です。
- スチール: ガルバニウム鋼板など、耐荷性・遮熱性に優れた素材。折板タイプの屋根に加工することで強度を高め、積雪・強風地域に設置するカーポートに用いられる事例が多い。
- アルミ: 遮光性・遮熱性・デザイン性に優れ、錆にも強いです。
- 塩化ビニール:自分で交換できる利点はありますが、最近使われない。
柱の素材
- アルミ: 錆びに強く、軽くて強度もあり、耐久性・遮熱性もある。カーポートに最も使われる構造材。
- スチール: 錆びやすいため塗装による対策が必要。耐荷性に優れ、アルミ材よりも安価で、加工しやすい構造材。
床の素材
忘れがちですが、駐車スペースの床材にも注意が必要です。カーポートの柱を設置する際、その土台となる床材がコンクリートなのか、土や砂利なのかも確認しておきましょう。 床材がオーソドックスなコンクリートであれば、車両の重量を十分に支えられ、カーポートの設置工事も難しくありません。レンガ・タイル・芝生・土・砂利の場合は、カーポートの設置可否や、コンクリート打設の必要性なども施工業者に確認しましょう。 最近は床材についても、もっとこだわることが可能です。普通のコンクリートや砂利では満足できない方は、よりデザイン性や機能性に凝ってみてはいかがでしょうか。
関連記事:おしゃれ・かっこいいカーポート! 費用や選び方を解説

車の台数別の種類
1〜2台分のカーポートが主流
一般的な戸建て住宅では、1〜2台分のカーポートが主流です。しかし、カーポートの構造は単純で工事も比較的容易であるため、敷地条件が合えば何台分でも追加設置することが可能です。車の台数や種類、敷地の条件などによって、縦列駐車タイプにも並列駐車タイプにも対応できます。一般家庭で4台分のカーポートを選ぶお客様は珍しいです。
1台用カーポート
LIXILの1台用カーポート「SC 27-50型」
2台用カーポート
三協アルミのカーポート「エアロシェード2台用」
3台用カーポート
YKKAPの3台用カーポート「エフルージュ トリプル FIRST XCSS0387」
4台用カーポート
LIXILの4台用カーポート「ST 3000タイプ横2連棟」

主要メーカー別の種類
日本で販売されているカーポートの主な製造メーカーと各社の代表的なカーポート商品は、次の通りです。これらのメーカーのものからデザインや性能、価格などを比較して、お好みのカーポートを選ぶお客様が多い傾向にあります。
LIXIL(リクシル)
LIXIL カーポート フーゴR 両支持 1台用 27-50型 屋根材クリアブラウン
国内大手の建材製品メーカーLIXILの代表的なカーポートは「フーゴ シリーズ」。風にも強く(耐風圧42m/秒が標準)、屋根の形も3つのスタイル(ラウンドタイプ・フラットタイプ・アーチスタイル)から選べます。
三協アルミ
三協アルミ カーポート スカイリード アーバングレーUC
三協アルミのカーポートは「設置しやすい」という施工業者さんもいる三協アルミ。評判の良い代表的な商品は「スカイリード シリーズ」。屋根に中桟が無いため、明るくオープンな屋根として人気のデザインです。
YKKAP
YKKAP カーポート レイナポートグラン 屋根ふき材ポリカ(アースブルー)
基本的なラインナップからバラエティ豊かなを展開しているYKKAPの代表的な商品は「レイナポートグラン シリーズ」。シンプルなR型で使用用途に合わせて様々なタイプを選べる点が評判です。
カインズ
カインズ カーポート VIC port αII 51-24タイプ 標準柱
カインズのオリジナルカーポートは、シンプルで低価格な定番のものを揃えています。リーズナブルで飽きないデザインが人気です。 「VIC port αII 51-24タイプ」(1台用104,800円〜)は、シンプルなデザインがコストパフォーマンスの良いカーポートとして好評です。
カインズのカーポート商品一覧を見る>

カーポートのサイズ選び。駐車台数と高さ
車の駐車台数と計算方法
カーポートの購入を検討している方は、すでにカーポートに駐車する「車の台数」と「車種」が決まっている場合がほとんどだと思います。下記を参考に車種のサイズを測って、カーポートの最適なサイズを選びましょう。珍しい車種によっては、メーカー規定のサイズと合わずに、はみ出してしまうこともありますので注意しましょう。
カーポートのサイズ目安
<カーポートのサイズ目安>
- 間口:車の幅(全幅) + 100cm~150cm
- 奥行:車の全長 + 60cm~
- 高さ:車の高さ(全高)+ 30cm~50cm
|
幅 |
高さ |
全長 |
車種 |
軽自動車 |
1.48m |
1.65m |
3.4m |
N-BOX / スペーシア / タント / ムーヴ / ルークス / ハスラー / アルト / ミラ / タフト / デイス |
小型車 |
1.68m |
1.5m |
4.5m |
ヤリス / ルーミー / ノート / ソリオ / マーチ / フィット |
中型車 |
1.7m |
1.5m |
4.8m |
カローラ / ライズ / フリード / インプレッサ / プリウス / カムリ |
ワンボックス |
1.7m |
2.0m |
4.8m |
アルファード / ヴォクシー / ステップワゴン / セレナ / デリカ / オデッセイ / エルグランド |
大型車 |
1.87m |
1.5m |
5.21m |
クラウン / レジェンド / フーガ / レクサス / BMW / ベンツ |
参考 車種のサイズ目安
カーポートの柱の高さによる分類
面積に加えて、高さにも注意しましょう。カーポートの柱の高さは、車両の高さに応じてカスタマイズも可能です。現在所有している車だけでなく、将来購入するかもしれない車種や、住宅との見た目のバランス、さらに来客の車種なども考慮すると、後悔しないカーポート選びにより近付くでしょう。
柱の高さによるカーポートの主な分類は次の通りです。
標準タイプ

標準タイプのカーポートは、高さ1800mm〜2000mm。圧迫感がなく、ハイルーフに比べて風雨の吹き込みが少なくて済むタイプです。
ハイルーフタイプ

ハイルーフタイプの高さは2300mm〜2500mm。車高の高い車に対応できるタイプ。
ハイロングタイプ

ハイロングタイプの高さは2800mm〜3000mm。キャリアなどの高さもカバーできるタイプ。

カーポートと建ぺい率(建蔽率)の法律関係
カーポートは建ぺい率に含まれる
カーポートは建築基準法上、自動車車庫として「建築物」に該当するため、設置にあたっては住居と同様に「建ぺい率」を考慮しなければなりません。
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合です(建ぺい率(%)=建築面積÷敷地面積×100)。地域によって建ぺい率の制限は異なります。 そのため、建ぺい率ギリギリの面積で家屋を建てていた場合、新たにカーポートを建てられない可能性があります。ただし、一定条件を満たせば、緩和措置を受けることが可能です。建築基準法で定めれれている建築物には、建築基準法やこれらの関係法に準じているかどうかをあらかじめ申請して確認してもらう「建築確認」と呼ばれる手続きが必要な場合がありますので、自治体や施工会社に確認してください。
建ぺい率に含まれない緩和条件
カーポートが建ぺい率に含まれない緩和条件
カーポートは、高い開放性を有する建築物であるため、一部を建ぺい率に含めないで済む緩和措置を受けることが可能です。具体的な緩和条件は次の通りです。
緩和条件
- 柱の間隔が2m以上
- 天井の高さが2.1m以上
- 外壁のない部分が連続で4m以上連続している
- 地階を除く階数が1であること
多くのカーポートは、緩和措置が適用されるかたちで設置できる可能性が高いです。詳細は地域によって異なります。また、防火地域・準防火地域は都市計画法で定められており、万が一の火災の際にできるだけ延焼を防ぐのが目的で、建築物は外壁・軒天などが防火性能を備えていなくてはならない等の規制があります。車庫も建築物ですから、この規制に従わなくてはいけませんので、自治体や施工会社に確認してください。
関連記事:カーポートの建ぺい率とは?|適用の条件や計算方法について解説

降雪量と風力で選び方を変えよう
積雪地域で選びたいカーポート
カーポート選びには、積雪量も考慮したい。
カーポートは積雪の影響を大きく受けます。積雪地域に設置する場合は、最大積雪量の強度目安を確認する必要があります。ただし、積雪量の目安は雪の比重により変化しますので、あくまで目安として考えてください。
<最大積雪量の目安>
- 一般地域対応タイプ~20cm
- 積雪地域対応タイプ~50cm
- 豪雪地域対応タイプ100cm~200cm ※雪の比重により変化しますので目安と考えてください。
最近は、豪雪地帯ではない地域や、あまり雪が降らない地域でも、記録的な大雪が降る可能性があります。予想外の天災に備えてカーポートが半壊・全壊しないように、最大耐積雪強度が高いカーポートを選んでおくとより安心安全です。
風が強い地域で選びたいカーポート
カーポートは強風によって倒壊したり、屋根が飛んだりして、人に被害を与えてしまう可能性もあります。強風が吹きやすい地域だけでなく、近年は記録的な被害をもたらす台風も各地で発生しているため、なるべく耐風圧強度の高いカーポートを選ぶ方も増えています。
耐風圧強度の高い商品の一般的な数値は、ポリカで42m/秒。折板で46m/秒になります。耐風圧強度が一番強いものは、YKKAPの「レオンポートneo Gr」で耐風圧強度が62m/秒になります(2021年7月現在、カインズ取り扱い商品のうち)。
YKKAPのカーポート「レオンポートneo GR」は耐風圧強度62m/秒

近所トラブル・柱の位置・地下埋設物にも注意
駐車しやすい設置位置
敷地条件によって、カーポートの設置向きは変わります。カーポートには柱があるため、設置位置と方向を考えないと、車の出し入れや駐車に苦労することになります。 十分なスペースを確保できない場合は、柱が後方にある「後方支持タイプ」のカーポートを選ぶと、車の出し入れがしやすくなります。
後方支持タイプのカーポート(YKKAP エフルージュ 2台用)
道路と隣地境界線
また、カーポートは隣地との境界線沿いや道路側に設置するケースがほとんどです。その場合、隣家の車の出し入れを邪魔しないか、事故につながるような死角を作らないか、雨や雪が隣地に落ちてクレームにならないか、雨ハネなどにも注意しましょう。 なるべく自宅の敷地に雨や雪が落ちるような設計の屋根のカーポートを選ぶのもポイントです。設置場所に応じて、屋根の勾配方向を変えることで、ご近所トラブルを避けることができます。
地下埋設物にも注意
カーポートの設置工事では、柱を地中に埋める場合があります。そのため、水道管やガス管、電気管、浄化槽などの障害物がある場合、ご希望のスペースや方向にカーポートを設置できない可能性も出てきます。 地下埋設物に関する詳細は施工業者やハウスメーカーに確認しましょう。

カーポートの価格相場を知ろう
カーポートの値段は、カーポートそのものの価格と、工事費用の合計金額になります。カーポート本体の価格は、メーカーやデザイン、駐車台数、耐風圧強度、耐積雪強度などによって異なります。また工事費用についても、地域や設置環境、施工業者によって変わってきます。 オーソドックスなカーポートの価格表は次の通りです。 カーポートの価格例 ※カインズは工事費込みで価格表示していますのでご安心ください。
>>より詳細な価格相場の説明は、こちらの記事をご覧ください。

カーポートの追加オプションも追加可能
カーポートの強度や機能性をさらに高めたい方は、オプションを追加することも可能です。たとえば、用途に合わせてサポート柱、サイドパネルを施工することができます。
サポート柱
サポート柱は、片側支持タイプのカーポートに取り付ける部品で、積雪・強風時にカーポートを支える補助の役割をします。必要のないときは取り外すことが可能な商品もあります。
サポート柱(YKKAP エフルージュ EX FIRST 着脱式サポート H2 XCXX0578)
サイドパネル
雨の吹き込み防止や目隠しのためにカーポートの側面に取り付ける部材のこと。高さの種類を選べます。
サイドパネル(YKKAP マット調パネル材 サイドパネル XCH21119)
その他、屋根材についても熱線遮断FRP板に変更するなど、遮熱・遮光性を高めるカスタマイズが可能です。

まとめ カーポートの選び方
以上、カーポートの選び方について解説しました。ポイントをまとめると下記になります。
- カーポートはガレージより安価で施工しやすい。
- カーポートの種類は豊富。
- カーポートの主なデザインには、片側支持タイプ、両側支持タイプ、後方支持タイプの3種類がある。
- 駐車台数と車種を確認して、カーポートのサイズ、デザインを決めよう。
- 国内主要メーカーのカーポートを比較してみよう。
- カーポートは敷地条件によって、建ぺい率の制限を緩和される。
- 駐車しやすいように、設置する場所や方向、柱の位置を確認しよう。
- 近隣トラブルにならないように雨ハネにも注意しよう。
- 車を買い替える時のことも考慮して、高さを決めておこう。
- 工事前に床材、地下埋設物についても確認しよう。
- 降雪地域や強風地域では、耐積雪・耐風圧強度があるカーポートを選ぼう。
実際にカーポートを購入する際は、ホームセンターや住宅展示場などで実物を見て、ご自宅の庭に設置した風景をイメージすることをオススメします。 この記事でも分からないことがあれば、お気軽に問い合わせください。
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