給湯器の法定点検について、「連絡が来たら必ず実施すべきなのだろうか」と迷っている方も多いかもしれません。また、「法定点検に費用はかかるの?」「法定点検は必須?」など、疑問点も数多くあると思います。
そこでこの記事では、給湯器の法定点検について、実施スケジュールや費用相場、点検を受けなかった場合の罰則の有無などについて分かりやすく解説します。また、給湯器の寿命を延ばすためのセルフメンテナンス方法も紹介しますので、ぜひ日々の生活のなかで意識してみてください。
給湯器の法定点検とは?
そもそも給湯器の法定点検とは、必ず受けなければいけないものなのでしょうか。ここでは、給湯器の法定点検の仕組みや時期、費用などについて解説します。
(1)給湯器の法定点検は必須なのか?
お使いの給湯器が「石油給湯器」の場合は、法定点検を必ず受けなければいけません。
消安法(消費生活用製品安全法)と呼ばれる法律では、「長期使用製品安全点検制度」という仕組みが設けられています。これは、経年劣化によって重大な事故が起こりかねない製品(特定保守製品)について、所有者が点検を受けなければいけない制度です。2022年3月時点で、「石油給湯器」と「石油ふろがま」の2製品が特定保守製品に指定されています(※1)。つまり、石油給湯器を所有している家庭は法定点検が必要ということです。
ちなみに「法定点検を受けなければ罰則があるのだろうか」と気になった方もいるかもしれません。経済産業省のガイドラインでは、法定点検を受けなくても「行政処分は伴わない」(罰則はない)としています。ただし、法定点検を受けなければ重大な事故のリスクが高まるため、必須で受けるべき点検といえるでしょう。
※1……2009年(平成21年)以降に製造・輸入された製品のみが対象です。
(2)なぜ法定点検が必要なのか?
法定点検が必要なのは、重大な事故を未然に防ぐためです。消安法で定められた特定保守製品は、安全に使用できる期間の目安として「設計標準期間」というものが定められています。石油給湯器の設計標準期間は、10年です。つまり、10年を超えて使い続けると、事故の危険性が高まることを意味します。
特に石油給湯器は、過去に設計標準期間を超えて使用したことで、複数の火災が発生しています。最悪の場合は住宅火災や一酸化炭素中毒といったリスクもあるため、法定点検で事前に異常を見抜いておく必要があるのです。
(3)法定点検の時期はいつ頃?
石油給湯器の設計標準期間は「製造から10年」と定められているため、製造から9年~11年のあいだに1度法定点検を受けなければいけません(※家庭用の石油給湯器の場合)。点検時期が近づくと、使用している石油給湯器のメーカーから法定点検の連絡が送られてきます。その内容に沿って、点検を申し込むようにしましょう。
(4)法定点検は有料?
石油給湯器の法定点検は「有料」なので、所有者が所定の点検料を支払う必要があります。点検料はメーカーによって異なりますが、一般的に「1万円前後」です。これはあくまで点検のみの費用なので、修理や交換が必要であれば追加費用がかかります。また、遠方から点検に来てもらう場合には「出張料」が別途必要です。
(5)法定点検で問題が見つかったらどうする?
法定点検の結果は、「適合」か「不適合」のいずれかで判断されます。仮に給湯器に何らかの異常が見つかった場合には「不適合」と判断されますが、特にその後の修理や交換が法律で義務付けられているわけではありません。つまり、不適合のまま同じ石油給湯器を使用し続けるかどうかは、あくまで所有者次第ということです。
ただし、不適合ということは事故のリスクが高まっているという意味でもあります。安全のためには、修理か交換が必要です。修理を選んだ場合、すでに製造から10年が経過した給湯器なので、部品の生産がストップしている可能性もあります。そのため、点検のタイミングで給湯器そのものの買い換えを検討したほうが安全に使用できるでしょう。
給湯器の購入から法定点検までの流れとは?

石油給湯器の法定点検は、どのような流れで受ければよいのでしょうか。ここでは、石油給湯器の購入から法定点検までの流れを「5つ」のステップで解説します。
(1)購入時に販売者から説明を受ける
石油給湯器を店頭で購入する際は、販売担当者から製品の「設計標準期間」や「法定点検の時期」についての説明を受けます。というのも、特定保守製品の販売事業者は、法定点検に関して所有者に説明する義務があると消安法で定められているためです。具体的には、「設計標準期間は安全に使用するための期間であること」「設計標準期間が近づいたら、異音や異臭に注意すること」「異変があれば使用を中止すること」などの説明を受けます。
(2)所有者の登録をする
購入後は、石油給湯器の「所有者」として名前や住所などの情報をメーカーへ登録します。製品のなかに所有者登録用のハガキが入っているため、必要事項を記入したうえでポストへ投函しましょう。石油給湯器の販売店舗によっては、購入時にその場でハガキを記入して担当者に手渡しできるケースもあります。ハガキを使わない場合は、インターネット上で給湯器メーカーのホームページにアクセスし、所有者情報を登録することも可能です。
(3)法定点検の案内を受け取る
法定点検の時期が近づいたら、メーカーからハガキやメールで点検の案内が届きます。石油給湯器の設計標準期間は「10年」なので、購入からしばらく時間が経っているはずです。そのため、所有者登録したこと自体を忘れているケースもあるかもしれませんが、連絡が来たら必ず法定点検は受けるようにしましょう。給湯器によっては、点検時期のお知らせ機能があり、点検時期になるとリモコンやランプにエラー表示が出るものもあります。
(4)法定点検を申し込む
点検通知の案内に沿って、ハガキやホームページ、電話などから法定点検の申し込みをします。法定点検の当日は所有者として立ち合いが必要なので、在宅可能な日程・時間帯を予約しておくようにしましょう。また、法定点検を依頼する際には、念のため給湯器の製品名や製品番号を確認し、間違いがないかチェックしておくことも大切です。製品名と製品番号については、給湯器本体の表示シールに記入されているため、そこで確認できます。
(5)法定点検に立ち会う
法定点検の当日は、メーカーの提携先や子会社などの専門業者が点検に来てくれます。法定点検を担当するのは、「点検員資格制度」に基づいて選任された有資格者です。法定点検では、省令で定められた項目とメーカーが独自に定めた項目を合わせて、約30項目の点検が実施されます。点検後は担当者から「適合」「不適合」の結果を伝えてもらい、今後の使用に関する説明を受けて終了です。所要時間としては、1時間程度が一般的でしょう。
点検後に異常が見つかった際には、給湯器の修理や交換が別途必要です。修理や買い換えの流れについて不安な点がある場合には、点検当日に点検担当者に確認しておくと、その後もスムーズに対処できるでしょう。
「あんぜん点検」と法定点検はどう違う?
「あんぜん点検」とは、各給湯器メーカーが独自に実施している、有料の点検のことです。
あんぜん点検は製造からの経過年数に関係なく受けることができ、いつでも給湯器の状態をチェックしてもらえます。法定点検は「石油給湯器」のみが対象ですが、あんぜん点検は「ガス給湯器」も実施が可能です。そのため、法定点検の対象でない給湯器も、あんぜん点検を受けることで安心して使い続けられるようになります。
また、法定点検を受けたあとにそのまま同じ石油給湯器を使い続ける場合は、不具合が発生するリスクが高まります。そのため、できるだけこまめにメーカーのあんぜん点検を受け、リスクを早期発見することが大切です。
給湯器のセルフ点検・メンテナンス方法とは?

給湯器を安全に長く使い続けるためには、普段どのようなことを意識すればよいのでしょうか。ここでは、毎日の生活のなかでできる給湯器のセルフ点検・メンテナンス方法について解説します。
(1)経年劣化のサインを見逃さない
給湯器を安全に使い続けるには、普段から製品の状態をチェックし、経年劣化や故障のサインを見逃さないことが大切です。例えば、給湯器に以下の状態がある場合は、何らかの不具合・異常が生じている可能性があります。
- 給湯器から焦げ臭いにおいがしている
- 給湯器の外装に錆(さび)や変色が発生している
- 給湯器の給水管からポタポタと水漏れしている
- 給湯器から「ピーッ」や「ゴーッ」といった異音がしている
こうしたサインが表れたときには、速やかに専門業者に連絡し、修理や部品交換を依頼するようにしましょう。
(2)設置場所を清潔に保っておく
給湯器本体や排気口は熱を発しているため、付近に燃えやすい物を置いていると引火のリスクがあります。そのため、古新聞や洗濯物は給湯器のそばに置かないようにし、虫の巣や落ち葉はこまめに除去しておくようにしましょう。給湯器の設置場所を清潔に保っておくだけでも、事故の危険性が減り、安心して使えるようになります。
まとめ
石油給湯器の法定点検は所有者の責務となっているため、メーカーから連絡が来た場合は速やかに点検日程の登録をすることが大切です。また、石油以外の給湯器についてもメーカーの「あんぜん点検」を定期的に受けることで、より安全に製品を使用できるようになるでしょう。給湯器メーカー各社のホームページをチェックし、点検の流れや料金について今一度確認しておくことをおすすめします。
※当ページのコンテンツや情報において、カインズリフォームでは、取り扱いが異なる場合がございます。